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「やばい、紫耀先輩にマフィン渡しちゃった！」
「え〜いいなぁ！私も行きたい！」
「まだ教室にいたよ！」
そんな女子の会話を聞きながら、自分もバッグから先程作ったばかりのマフィンを取り出す
「…なんや、底焦げとるやないか」
みんなと同じように作ったのにな、なんて思う
歪な形に膨らんだそれをひと口
「…んー、普通」
二口目を齧ったところで、教室の扉が音を立てて開いた
「れん、帰るぞ」
顔を見せたのは俺の幼馴染みである紫耀
「んー」
「…お前もそれ貰ったの？」
「ん、これ？ちゃうで、さっき作ってん」
「ふーん」
「てか、お前“も”って何やねん。自分貰っとるんかい」
「まぁ、俺モテるから」
「うわ、今の発言全生徒に聞かせてやりたいわ」
食べるのをやめて、再びラップに包む
「ねー、それ俺にちょうだい」
「何でやねん。嫌や」
バッグに入れようとしたが、紫耀に奪われてそれは叶わなかった
「んま」
「俺のおやつが…」
「いいじゃん、ケチ廉」
「ケチ呼ばわりか。返せ」
「もうこれ俺のだし」
「そんなん勝手すぎやし」
でも、美味しそうに食べる紫耀を見てると、まぁいいかなんて思えてくる
「…沢山貰ったんやろ」
「うん」
「それ食えや」
「あれは食わん」
「は？」
「全部まとめてひとつにして冷凍する」
「…それバレンタインでもしてへんかった？」
「そうだっけ？」
「おん」
「ごちそうさま」
気づけばマフィンはなくなっていて、紫耀がラップを丸めてゴミ箱へ捨てた
「…黒かったやろ、下の方」
「え、そうだったの？」
「…苦いやろ。不味いやろ。女の子が作ったやつのが美味いで」
「廉が作ったやつがいいの。だって一生懸命作ったんでしょ？」
「それは…せやけど、」
「美味しかったよ」
そう言って微笑むから、ズルい
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作者名：茉莉 | 作成日時：2021年5月22日 18時
