今までも、これからも (ページ48)

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どうか行かないで ② ページ48

木村拓哉視点

Aのその優しい目も、優しい言葉たちも。
俺に向ける、その気持ちも。
全て嘘じゃないだろう。俺だって嘘じゃないんだから。

結婚すると決めた時点で、これが最後の恋になると悟った。
A以外に、こんなにも本気になるとは思えないから。
だからこそ、まだ一緒にいたかった。少しでも、1秒でも長くAの傍にいたい。欲を言えば、一生俺の傍にいてほしかった。繋ぎ止めたかったんだ。
でも、Aはそんなこと望んでいない。最初から離れ離れになることを受け止めている。俺はそこまで強くなかった。この苦しさまでも愛せる程、俺は強くなれなかった。

『木村くん、結婚おめでとうございます！』

分かっている。その言葉だけが本心じゃないことを。どれだけAのことを見ていたと思ってるんだ。
愛してる。あの日から、俺はA、お前だけを見ていた。
何度、どうかAが俺の傍にいてくれと、無意味に願ったか。
それを知ったらAは俺らしくないと言って笑うだろうか。それでもいい。Aが俺に笑顔を向けてくれるのなら、どんな姿だって晒すよ。

『絶対幸せになってくださいね。約束です！』

そうだよな。叶わないもんな。お前はもう、諦めていたもんな。
もしAが俺を諦めなかったら、俺たちはこんな事にならなかっただろうか。お互い何もかも捨てて、2人だけで幸せだと笑いあっただろうか。

それはお互いの為じゃない。誰も望んでいない未来だから。
だからこそ、俺も捨てるよ。お前を愛しすぎてしまう前に。これから先、Aにとって1番良い未来がくるように。

だけど、今だけは頬を伝う涙を許して欲しい。
誰にも知られないように、1人で泣くから。