今までも、これからも (ページ47)

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どうか行かないで ① ページ47

ヒトリ/かりん

木村拓哉×男主

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A視点

ジャニーズに入った時点で、捨てなければいけないものは全て捨てたつもりだった。
普通の恋愛なんて、望むつもりはない。俺は、特別なんて作ってはいけない。皆を平等に愛し、全ての心を満たさないといけない。アイドルとは、そういうものだから。

そうやって、人を愛したから。だから、貴方に愛されないことなんて、愛されてはいけないことなんて1番知っていた。

｢Aは俺の、、いや、俺らの自慢だよ。お前がジャニーズで良かったわ｣

そう言って、笑う木村くん。木村くんは俺にとって、かっこいいお兄ちゃんでしかなかった。優しくて、皆を見ていて、人との関わり方も上手で。
木村くんに憧れる人が多いのだって納得出来る。先頭に立ち、道をひらく姿にたくさんの人が尊敬の目を向けていた。
有難いことに、俺は皆に好かれていたと思う。俺の事を気に食わない人もいたけれど、その声が届かない程俺の周りは俺の事を好いてくれていた。嬉しかった。俺の考える、1番のアイドル像になれていると思ったから。

それで良かった。今までも、これからも。
誰か1人ではなく、沢山の人を愛し、愛される。
それが死ぬまで続くのなら、何を捨てても良かったのに。

｢お前のことは俺が1番見ていてやるから｣

木村くんを見る度に、声を聞く度に。胸が苦しくなった。俺だって恋愛をしてこなかったわけじゃない。だから、この痛みが何なのかは分かっていた。
諦めろ。捨てろ。何度も自分に言い聞かせた。
それでも木村くんを前にすると、全てをさらけだしてしまいそうで。壊れてもいいと思った。きっと受け入れてくれると、そんな都合の良い事ばかり考えてしまう。

だって、木村くんの俺を見る目が、俺の全てを分かってくれる気がしたから。

でも、だからこそ、俺は木村くんを愛してはいけない。
木村くんの未来を潰したくなかった。誰からも愛されている木村くんを、自分のものにするなんて。そんな烏滸がましいこと、俺じゃダメだ。俺じゃないんだ。

｢Aはほんと可愛いな。、、ハハッ、そんな照れんなって｣

そう言って俺の頭を撫でる、その大きな手がどれだけ俺の心をかき乱すか。木村くんはきっと分かってるくせに。
失いたくないな、と空に願うほど、苦しくて惨めになった。