今までも、これからも (ページ44)

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好きになってく ② ページ44

重岡大毅視点

｢あー、、そうやな、好きになったんはJrの頃やな｣

｢じゃあ好きになってから随分長いんやな｣

濵ちゃんの驚いた顔に、そうやねん。と返す。
思い返せば、Aさんを好きになってからもう10年以上は経っているだろう。

｢んー、あんまり話したくないんやけどな、｣

気付けば全員真剣そうに聞いてるのに少し引きながら、好きになった経緯を話した。

あの頃の俺は、正直不安定やったと思う。やっとデビューできたと思ったらまさかの4人。俺は絶対に7人でデビューできると思っていたから。
せっかくのデビュー発表も、笑顔が引き攣り、上手く話せなかった。こんな事言ってはいけないんだろうけど、デビューなんてしたくなかった。7人じゃないなら。
それから、何度もジャニーさんに7人でデビューさせてくれと話した。何度も何度もぶつかり、それでも上手く変わらない現実に泣いたこともあった。

そんな時に支えてくれたのがAさんだった。
既に東京でデビューしていたが、関西の俺らをとても大切にしてくれていた。

『しげはえらいなぁ』

｢そんな事ないっすよ、、ありがたくデビューさせて頂いてんのに、満足出来ないで。俺、別にダンスも歌も上手くないし｣

『うん』

｢でも俺、皆が好きなんす。アイツらとデビューしたいです。どうしても、諦められないんです｣

『そっかぁ』

自分の想いを打ち明けると、涙がこぼれそうになる。泣いてはダメだと下唇を噛んで耐えていると、横に座っていたAさんに抱きしめられた。

『大丈夫。大丈夫やで。シゲは間違っとらんよ』

｢っ、Aさん、おれっ、、｣

『うん。分かっとる。皆ちゃんと分かっとるから』

その日、大泣きして疲れて寝てしまった俺を、Aさんは起きるまで抱きしめてくれていた。
忙しいのにすみませんと謝ると、Aさんは俺の顔を見て、俺の背中を叩きながら笑った。

『さっきよりもええ顔しとるやん！大丈夫やで、しげ。味方は沢山おるからな』

多分、その時のAさんの笑顔のお陰で俺はそれ以降も頑張れた。
辛かった時や悲しかった時も沢山あったが、あの時の言葉と笑顔が、俺の糧になった。
それからだろう。Aさんのことを目で追うようになったのは。最初は尊敬とか、そういう感情だと思ったけど。