今までも、これからも (ページ17)

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初めて ② ページ17

A視点

分かっていた。
木村くんは俺のことが好きで、俺は木村君が好き。
理解してた。
それは世間が許してくれることじゃないって。
受け入れた。
俺は【アイドル】を捨てる覚悟なんてなかったから。

『木村くんには、できたんですよ。何より大切にしないといけないものが』

「A、、」

『だから1番なんて無理です』

そう言うと、木村くんは眉をひそめながら笑った。
あー、その顔もかっこええなぁ。ほんと、何しても絵になる男だ。

かっこよくて優しくて誰よりも俺を見てくれた、大切な人。

「お前のことだからな。そう言うと思った」

『流石木村くん！俺のことよく分かっとるわぁ』

「当たり前だろ」

俺から離れて、優しく笑う木村くんはほんとにかっこよくて。
思わず泣きそうになってしまい、顔を伏せる。泣けば木村くんを困らせてしまうから、それだけはダメだ。下唇を噛んでなんとか抑え、俺も木村くんに笑顔を向ける。

『幸せになってくださいね。俺がこの世で1番幸せだ、って言えるくらい、幸せに』

そう言うと、俺のケータイが鳴った。着信先を見るとマネージャーからで、多分仕事のことだろう。こんな電話を無視してでも木村くんの傍にいるなんて、俺にはそんな価値がないから。

『仕事なんで、俺もう行きますね！』

電話に出ながら、木村くんに笑顔を向けて手を振る。
そんな俺に、おう。と手を振り返す木村くんを目の端に捉えながら、背を向けた。

消すつもりはないし、なかった事になんか絶対にしない。
木村くんにもらった幸せは、俺の中だけで輝くから。
いつか、遠い遠い未来で、俺のもしもが叶う日がきたら。
その時きっと、初めて木村くんの前で本当の涙を見せるんだろう。