初キスは蕎麦の味【轟焦凍】 (ページ1)

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「焦凍、お昼食べよ」

「おう」

お昼はいつも、彼氏である焦凍と一緒に食べる。
教室を出て、ちょっと歩いた中庭のベンチに二人で腰かける。
自分の膝をテーブル代わりにして、お弁当を広げた。
途端に香るオムライスの匂い。
いい匂い、今日も美味しく出来たな。

「旨そうだな」

「ありがと…って、焦凍いつも蕎麦食べてるね」

ベンチの端には、焦凍曰く温かくねぇ蕎麦が。
テーブルが無いと食べにくいだろうに、毎度のこと器用に食べている。
さすが焦凍と言うか、なんと言うか。

他愛の無い会話をしながらお昼を食べる。
基本的に私が一方的に喋っていて、焦凍はただ黙って聞いているだけだけど。
でも、私はこのゆったりした時間が一番好きだ。

「でね、じろちゃんと上鳴くんがね」

「…」

急に黙って私の顔をじっと見る焦凍。
私も釣られて黙ってしまった。

ずっと見つめられている状況に耐えられなくて、どうしたの？と、恐る恐る話し掛ける。
依然、焦凍は黙ったまま。

「焦凍…？」

不意に感じたのは、熱。
そして、冷たい蕎麦の味。
熱いような、冷たいような、ふわふわとした感触。
それは、すぐに私から離れてしまった。

「旨いな、ごちそうさま」

「え…？」

ニヤリと笑った焦凍は、先に教室に戻ってしまった。
なんだったんだろう…。

あれ…？もしかして、キスされた…？

突然、ぐるぐると頭が回り出して、先程の事が思い出される。
感触、体温、やけに具体的に思い出されるそれは、私の顔を赤くするのに十分だった。