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うん、と相槌を打った涼は、じゃあ、と左手をあげた。
もう、家の前なのだ。
隣のそれが聞こえる前に、
灯りのついてない家の鍵をガチャリと開けた。
ばたばたと階段を上がり、自室の扉をバタンと閉じた。
壁にもたれかかると、重力に従って、ズルズルと腰が落ちる。
さっきの涼との会話で、踊り場に見た光景の時と同じ波がまたやってきた。
恋をしたことがない、と思っていた。
そんな、きらきらしたことは自分とは無縁だと思っていた。
でもきっと、わたしが今抱いているこれも_____
きっとずっと、わたしは涼にそういう気持ちを抱いていたのだと気がついた。
いや、もうとっくのとうに気づいていたのかもしれない。
「幼馴染」という関係に甘えて、それが壊れるのが怖くて、新たな感情に目を向けようとしなかっただけなのかもしれない。
わかっていた。
いつかは涼にも恋人ができることくらいは。
でも心のどこかで、涼が私を選んでくれるのではないか、とも思っていた。
こんなに苦しいことになるなら、もっと早くに素直になれば良かったと思ってももう遅いのだろう。
あのうたた寝のときの夢が、正夢になったようだった。
夢で見た私の知らない涼は、後輩から彼女へと肩書きを変えたあの子に、これから向ける笑顔だ。
ぽろぽろと涙が頬を伝う。
自業自得だ。
気持ちを伝えたかった自分が悪い。
この、辛く苦しいものが、恋なのだ。
そして、聞いたことがある。
身をもって実感した、この言葉。
“ 初恋は実らない ” と______
『初恋』 end.
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続く (更新停止中)
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作者名：みりん x他1人 | 作成日時：2019年6月8日 1時
