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「......そうなんだ」
なるべく平静を装って、声の震えが出ないように注意を払う。
知っている。
さっき、見たから。
さっき、委員会の仕事をしに別の棟へ行った帰り。
玄関を出ようとしたら、ふと歩みをとめた。
「ずっと、好きでした。」
可愛らしい、透き通るような声が聞こえてきたのだ。
声のする方に目を向ければ、階段の踊り場に2人の男女が向かい合って立っていた。
男の子の方はきっと、涼。
横顔とノーセットの明るい茶髪が目に飛び込んできた。
女の子の方は、制服のリボンの色から1つ下の学年だとわかる。
『え、まじで?』
まいったなぁ、なんて頭をかいている。
『俺から言おうと思ってたのに。』
可愛らしい後輩ちゃんから、え、と声が漏れたのが聞こえた。
『俺も、ずっと好きでした。付き合ってください!』
彼が元気よく言うと、後輩ちゃんは泣いてしまったようだ。
『うぉ、なんで泣いてるの!?大丈夫!?』
涼の焦った声が遠くなる。
勝手に足が動き出して、校門を出た。
胸が苦しい。
何かはわからないけどマラソンで走りきった後のようなものとは違って、
そう、授業中の夢の中で感じた胸の苦しさと似ている。
何故か溢れそうな涙をぐっと堪えて、ひたすらに足を進めていた。
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作者名:みりん x他1人 | 作成日時:2019年6月8日 1時