夏の追憶 :愁傷

3 ページ4

2号機越しに眩い光が差し込む。
それに照らされた瞬間、私の脳内を次々と過ぎる過去の思い出。

墓地、人形、向日葵、病院、太陽、死…
嫌だ、せっかく忘れてたのに思い出させないで！
私は一人で生きれるの。だから辛い思い出なんて欲しくない！！

どうにかして気をそらそうと頭を掻き毟る。血が出てるかもしれない。
でもそんなのはどうでもよかった。

だって痛みなんて感じてる余裕、今の私には無かったから。



沢山頑張って入った大学。そこで私に勝てる大人はいなかった。みんな私を見てくれてる、そう思ったのに。

エヴァに乗ってみれば、使途を倒したのは私じゃなくてバカシンジ。ロクに勉強もしてないし、目立ちもして無いあいつが。

レイも私と違っていくつも手柄を立ててる。
ラミエル戦の時は、使徒の強力な光線からバカシンジを守り抜いた。それがなかったら確実に勝てなかった。

それにAだって。
訓練もしてないのにいきなり本番、それなのに対3号機戦では私より活躍した。バカシンジがこの前の使途を倒せたのも、アイツがコアの装甲にヒビを入れたからだった。


自分より下だと思っていた奴らが、私より成果を残してのし上がっていく。

考えて、ねえ。この中で一番何もできてないの、私じゃない。
どの使徒の戦闘の時を思い浮かべても、自分がいなくても勝てたじゃないの。
だって、私の他にレイやAがいるのだから。


…じゃあ私が、パイロットの中では一番いらないってこと…？

いやよ。そんなの。
だってエヴァのパイロットじゃない私は誰も見てくれない。褒めてだってくれない。


ママはもう死んじゃった。ずっと人形を見ていたけど、パイロットに選ばれた私を知って構ってくれるかも。
そう心を踊らせて帰ってみれば、そこにあったのは首吊り死体。

大好きな加持さんにだってミサトがいる。おまけに今じゃ行方も知れない。もしかしたら絡んでくる私がうざかったのかも。


それにバカシンジやレイ、A…他のみんなだって誰かに必要とされてる。想ってくれる人がいる。

だから私はいらない存在。いなくてもいい存在。
誰にも必要とされていない存在。

それなのに今もここに生きていて、周りの大人を困らせる。



「アスカ、早く撤退して！！」

「嫌！このまま戻るなら死んだ方がマシよ！」


臆、そうだ。
これは、私のプライド。

誇り高きエヴァのパイロットとしての、強烈なプライド。
精神を支えていたハズの柱、それはいつか耐えきれなくなって…そして粉々に砕かれたその破片が私自身の心に深く突き刺さった。

星霜→←2

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す