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綴るバンデジ ページ28

「…もうどうでも良いの。色々」

少しの沈黙の後、諦めたように心ノはそれだけ呟いた。
相変わらず彼女の目線は、床へ散らばった錠剤に向けられている。

それがカヲルの焦燥心を煽った。


「なにそれ、色々って?」

「話すのも面倒くさい…」


うんざりしたように言葉が放たれる。
彼女が眉をひそめた。それによって眉間に皺がよる。

どうしてそんなに踏み込んでくるの。他人なのに。
散々無視してきたのに、どうして。

細々とした、誰にも聞こえないような声でそう呟く。

段々苛立ってきたのだろう。心ノの言葉に棘がつき始めた。
それを向けられた当本人のカヲルは、まるで気にしないように変わらず話を続ける。

「どうして君は、そんなに他人との関わりを拒むのさ」

不思議そうな声色のそれに、心ノが反応を示す。
カヲルはそれを見逃さなかった。注意して、彼にしては珍しく深く考え込んでいた。

少しの沈黙の後、心ノは口をゆっくりと開いた。


「どうせ裏切られるから。昔からそうだった」

「裏切る?」

「最初は普通に接してくれるけれど、私の本音を聞くと『そんな奴だと思わなかった』だとか。散々いうの」

それで辛い思いをするぐらいなら、もうどうでもいい。
他人のことを想ったり、必要以上に関わるなんてしない。

私のことをわかってくれる人なんて、いないんだ。だったら、もう辞めたいの。
嫌なことがあるなら、楽しいことだって要らないから。

そう呟く彼女のひとみは、今ではなく、過去を映していた。
そんな心ノをみて、カヲルは訝しげに眉を潜める。


話しかけるというよりかは、独白のようだった。
ぶっきらぼうに投げ捨てられた、自分自身の勝手な考え。


「だったら、最初から自分を晒せ出せばいいのに」


それを耳にした心ノが、初めてカヲルを見た。

え、

予想外の言葉に、思考が止まる。
一瞬何か反論をしようと口を開いたが、喉が詰まって何も言葉が出ずに終わった。
それを良しとして、カヲルが一気に畳みかけた。


「だって、自分の主張をしておけば、初めから君の全てを知ってくれる人だけが残るだろう」

そうすれば、『そんな奴だと思わなかった』なんて、言われたりしないんじゃないの?

他人に合わせて、流されてばかりで自分を偽りの殻に閉じ込めるから、それが悪いんだ。
自分じゃないフリをして、それに寄ってきた奴らが離れていくから。

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アオウサギ(プロフ) - 更新お待ちしております!!!!!!!ー! (9月7日 17時) (レス) id: 8561e7888e (このIDを非表示/違反報告)
ゆわ(プロフ) - はじめまして。コメント失礼致します!わたしは1年ほど前にエヴァにどハマりし、また、今再熱したので占ツクで小説を探していたところこちらの作品を見つけました。はい様の文章表現やストーリーがとても好きです。続き楽しみにしております! (2023年2月16日 13時) (レス) @page31 id: 306206b07c (このIDを非表示/違反報告)
こまり(プロフ) - すごく読み応えのある作品で、一気に読み終わりました!更新お待ちしてます。 (2021年8月28日 20時) (レス) id: 92ffc05bff (このIDを非表示/違反報告)
ユウキ - 素敵な作品をありがとうございます。応援しております。 (2021年3月12日 2時) (レス) id: 7c28523323 (このIDを非表示/違反報告)
はい(プロフ) - サナさん» ありがとうございます。これから忙しくなってくるので更新が遅れるかもしれませんが、今後も読んでいただけると幸いです。 (2021年1月2日 1時) (レス) id: 573ffe8b83 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はい | 作成日時:2020年12月22日 1時

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