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「落ち着いた?」
カヲルの呼びかけにシンジは頷かなかった。
だが体の震えはとうに止まっているし、呼吸の間隔は開いていたので大丈夫だろう。
そう判断した彼は袋を畳み、ゴミ箱に捨てる。
「やっぱ、嫌われたこと嫌だったの?」
疲れ果て反抗することを忘れた彼に対し、カヲルはふと問いかけた。
その声にシンジはゆっくりと顔を上げる。
依然として彼は答えなかったが、その瞳が少し揺らいだのを見てカヲルは図星だな。と勝手に思う。
「嫌われて当然のこと、って何」
今なら怒らないだろう、そう思った彼は2日前と同じ疑問を口にした。
「…、なんでそんなに知りたいんだよ」
どうやらそれは半分正解のようで、気怠げな声がカヲルの耳を通り抜ける。
目線を向ければ再び俯いたシンジの姿。影がかかったその表情は、とても良いとは思えない。
関わるな、とでも言いたげなその態度。だけどそれは表面的なものに過ぎない。
そのことにカヲルは薄々気がついていたのだろう。
「なんでって…、だって君が__」
そう口を開いたカヲルの言葉は最後まで紡がれることはなかった。
机の上で振動する携帯、その着信音に遮られたからだ。
あまりに煩く喚いたものだから、二人の視線は一気にそれに注がれる。
三コールほど鳴り響いたところで、ハッとしたようにシンジがそれを手にした。
電話の相手は先程と同じで葛城ミサトだろう。カヲルはどこか遠い頭で思う。
また聞きそびれてしまった。そう肩を落とした彼だったが、こんな夜遅くにいきなり、しかも二度も電話を寄越すなんて余程の大事なのだろう。
当分『嫌われて当然のこと』については聞けないらしい。
そう思った彼の考察は正しかったようで、どうやら死んだと思われていたレイが生きていたとの報告だった。
シンジはそれを聞いて弾かれたように顔を上げる。
が、それも束の間。
〈Aにも伝えておいてくれないかしら?電話、繋がらないのよ〉
ミサトのその言葉に、再びシンジの顔に影がかかった。
心ノの寝泊りしている部屋は確かにすぐ側だ。けれどもこんな状況じゃ、とても会う気になれなかったらしい。
珍しく空気を読んだカヲルが『僕が行ってくる』と答えると、シンジは眉を潜めたものの渋々了承した。
二人は急いで制服に着替えると、廊下で双方に分かれる。病練への道筋と心ノの泊まる部屋は真反対に位置していたからだ。
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アオウサギ(プロフ) - 更新お待ちしております!!!!!!!ー! (9月7日 17時) (レス) id: 8561e7888e (このIDを非表示/違反報告)
ゆわ(プロフ) - はじめまして。コメント失礼致します!わたしは1年ほど前にエヴァにどハマりし、また、今再熱したので占ツクで小説を探していたところこちらの作品を見つけました。はい様の文章表現やストーリーがとても好きです。続き楽しみにしております! (2023年2月16日 13時) (レス) @page31 id: 306206b07c (このIDを非表示/違反報告)
こまり(プロフ) - すごく読み応えのある作品で、一気に読み終わりました!更新お待ちしてます。 (2021年8月28日 20時) (レス) id: 92ffc05bff (このIDを非表示/違反報告)
ユウキ - 素敵な作品をありがとうございます。応援しております。 (2021年3月12日 2時) (レス) id: 7c28523323 (このIDを非表示/違反報告)
はい(プロフ) - サナさん» ありがとうございます。これから忙しくなってくるので更新が遅れるかもしれませんが、今後も読んでいただけると幸いです。 (2021年1月2日 1時) (レス) id: 573ffe8b83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はい | 作成日時:2020年12月22日 1時