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ヒトって複雑だ、無駄が多すぎる。

そんな悩みごちるカヲルの思考は瞬く間に浮上した。

シンジの使っている携帯、それが彼のそばのテーブルで低い唸り声を上げたからだった。
小さく振動するその画面には『ミサトさん』とだけ表示されていて、電話か。と遠くでカヲルは思う。


そのまま顔を上げてベットの方をみれば、シンジは未だに布団の中に蹲ったまま。寝ているのかもしれない。

そんな彼に電話が来たことを伝えるために、カヲルは「シンジくーん?」とその場で声をかけた。

が、帰ってくるのは静寂。

仕方ない、睨まれるかもしれないけど渡してやるか。そう携帯に手を伸ばしたとき、カヲルの耳に聞き覚えのある音が通り抜けた。


ヒュッ、といった風を切るような鋭い音。
それに彼はまたか、と肩を落とす。

シンジは過去に何度か過呼吸を起こしていた。と、いってもまだ片手で数えられるほど。
そうだとしても袋を持ってくるのは面倒くさいし、落ち着くまで様子を見なければならない。

やれやれ…。そういったように立ち上がると、そばにとっておいた予備のコンビニ袋を手にする。携帯は未だに振動を続けていたが、また掛け直せばいい。

そっとベットに近寄れば、いつもとは違いあの反抗的な視線は向けられなかった。
掛け布団をめくるとそこにいるのは苦しそうに息を荒げるシンジの姿。

慎重に上半身を起こさせて口元に袋を持っていってやれば、彼は震える両手でそれを掴む。
カヲルはそんな彼のそばに腰掛けて、呼吸が落ち着くまで様子を見守っていた。



過呼吸を起こしたとき袋を使うのは、血中の二酸化炭素を増やすためだと聞いたことがある。

息の吸い過ぎで酸素を過度に取り込むと、血中の二酸化炭素が極端に薄くなる。そうすると循環バランスが崩れて上手く呼吸ができなくなるのだ。

そうなれば脳はパニックによる勘違いをして、さらに酸素を取り込もうとしてしまう。これが過呼吸の起こるメカニズム。

だったら息を止めればいいと思うのだが、それが案外難しいらしい。
あれだ、不審者に話しかけられたら大声を上げろと教えられるが、実際にそうなったら怖くて声が出ないみたいな。

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アオウサギ(プロフ) - 更新お待ちしております!!!!!!!ー! (9月7日 17時) (レス) id: 8561e7888e (このIDを非表示/違反報告)
ゆわ(プロフ) - はじめまして。コメント失礼致します!わたしは1年ほど前にエヴァにどハマりし、また、今再熱したので占ツクで小説を探していたところこちらの作品を見つけました。はい様の文章表現やストーリーがとても好きです。続き楽しみにしております! (2023年2月16日 13時) (レス) @page31 id: 306206b07c (このIDを非表示/違反報告)
こまり(プロフ) - すごく読み応えのある作品で、一気に読み終わりました!更新お待ちしてます。 (2021年8月28日 20時) (レス) id: 92ffc05bff (このIDを非表示/違反報告)
ユウキ - 素敵な作品をありがとうございます。応援しております。 (2021年3月12日 2時) (レス) id: 7c28523323 (このIDを非表示/違反報告)
はい(プロフ) - サナさん» ありがとうございます。これから忙しくなってくるので更新が遅れるかもしれませんが、今後も読んでいただけると幸いです。 (2021年1月2日 1時) (レス) id: 573ffe8b83 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はい | 作成日時:2020年12月22日 1時

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