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気温も湿度も心地の良い室内。
肌触りの良いシーツに寝転がって、私は天井の節目を数えていた。

自室にはテレビや本棚があったが、やっぱり行動を起こす気になれなかったのが事実だ。
お笑い番組を見ても笑えないし、文字のびっしり並んだ小説を読むのもあんまり。

一日中ぼうっとしているだけだし、靄がかかったみたいに気分が晴れない。
ずっと気分が落ち込んでいる、けれど泣くほど悲しいわけではない。

まるで喉に魚の小骨が刺さったみたいに、ぼんやりとした痛みがある。

ご飯は食べるけれど食欲なんてないし、吐き気だってする。トイレで嘔吐をしようと思ったけれど、やっぱり勿体無いと思ってなんとか堪えた。
他人と関わる気にもなれなくて、ミサトさんや碇君たちの話も全て聞き流してしまった。

そしてそんな私の良い加減な態度を見ても、誰も怒りはしなかった。


それは何故だろう。

私が気を病んでいるから?

否、そんなのはただの甘えだ。


何故なら私はとても酷いことをした。
苦しんでいる碇君を無視して、それで接触することを拒んだ。
面倒臭かったから、そんな軽い理由で。


彼は私の為に包帯を巻いてくれたのに。
優しく手を差し伸べてくれたのに。

そしてこうやって自身を責めても、昔ほど罪悪感は感じなくなっていた。

まるで薄いガラス越しに存在しているようで、全てを他人事として見てしまう。

例えるならば、連続殺人をした人間のニュースを見て『この人は酷いことをしたんだな』と、第三者視点で思うみたいに。
自分のことすら、そんな風に見てしまっていた。


でもそのままでいいと思った。

だってもうどうでもいい、周りにどう思われるとか。
みんな今は普通に接してくれるけれど、それは私のことをまだ知らないだけ。

この胸の内に秘めた感情、それを知ったらきっと離れていく。
そんな酷い人間だとは思わなかった、と。


だから、どうでもいい。

どうせ人と人は理解し合えないのだから。

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アオウサギ(プロフ) - 更新お待ちしております!!!!!!!ー! (9月7日 17時) (レス) id: 8561e7888e (このIDを非表示/違反報告)
ゆわ(プロフ) - はじめまして。コメント失礼致します!わたしは1年ほど前にエヴァにどハマりし、また、今再熱したので占ツクで小説を探していたところこちらの作品を見つけました。はい様の文章表現やストーリーがとても好きです。続き楽しみにしております! (2023年2月16日 13時) (レス) @page31 id: 306206b07c (このIDを非表示/違反報告)
こまり(プロフ) - すごく読み応えのある作品で、一気に読み終わりました!更新お待ちしてます。 (2021年8月28日 20時) (レス) id: 92ffc05bff (このIDを非表示/違反報告)
ユウキ - 素敵な作品をありがとうございます。応援しております。 (2021年3月12日 2時) (レス) id: 7c28523323 (このIDを非表示/違反報告)
はい(プロフ) - サナさん» ありがとうございます。これから忙しくなってくるので更新が遅れるかもしれませんが、今後も読んでいただけると幸いです。 (2021年1月2日 1時) (レス) id: 573ffe8b83 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はい | 作成日時:2020年12月22日 1時

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