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〈嫌いな人と今まさに一体になってる。ね、それってどんなキモチ?〉
嘘、違う。そんなわけがない。
だってお母さんは事故で死んだ。こんなところにいる訳がないから。
交通事故、それもイレギュラーな。車が歩道に突っ込んで来て、それで目の前で…
〈逃げちゃダメだよ。本当にそれって真実?〉
何が言いたいの…。苛立ちが抑えきれなくなって、思わず彼女の首元に飛びかかりそうになる。
その寸前に、あれ。と思った。
記憶が、無い。
お母さんが交通事故で死んだって、その類の記憶が微塵も無い。
なんで。何故、どうしてないの?
〈嘘だからだよ、自分に言い聞かせるための〉
「え…」
〈だって見てたでしょ?君、自分の親が死ぬところ。米国の実験施設で〉
「あ、あ。…、」
ガクガクと震える手足、溢れ出る涙。
そしてこの場所への拒絶反応。
だめだ。これ以上は危ない。
ここにいちゃいけない。
ここから逃げ出したい。
違う、ここにいたくない。
死にたい。
そうだ、今すぐ死にたい。
それとも消えたい?
そう、存在ごと消えたい。
屈辱だ。あんな奴と一緒に戦ってたなんて。
はっと気がつけば、そこに広がっているのは仄暗い世界。口から生まれるのはいくつかの泡沫。
現実に意識が戻ってきたのだろう。
だけど今の私に操縦機を動かす気力は無くて。
涙で顔がぐちゃぐちゃだ。顔面やら腕やらをずっと掻き毟っていたから、もしかしたら血も混ざっているかもしれない。
それすらも明確に分からない。だって痛みなんて概念、思考の内に入ってすらいなかったから。
「…、」
気分を落ち着かせようとして、なんとか口を引き結ぶ。
静寂に響くのは自身の荒い呼吸。その他に音なんてものは存在しない。
けれども、またもう一人のワタシの声が聞こえてきそうな気がして。
ただただそれに怯えながら、頭を抱えて操縦席に蹲った。
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アオウサギ(プロフ) - 更新お待ちしております!!!!!!!ー! (9月7日 17時) (レス) id: 8561e7888e (このIDを非表示/違反報告)
ゆわ(プロフ) - はじめまして。コメント失礼致します!わたしは1年ほど前にエヴァにどハマりし、また、今再熱したので占ツクで小説を探していたところこちらの作品を見つけました。はい様の文章表現やストーリーがとても好きです。続き楽しみにしております! (2023年2月16日 13時) (レス) @page31 id: 306206b07c (このIDを非表示/違反報告)
こまり(プロフ) - すごく読み応えのある作品で、一気に読み終わりました!更新お待ちしてます。 (2021年8月28日 20時) (レス) id: 92ffc05bff (このIDを非表示/違反報告)
ユウキ - 素敵な作品をありがとうございます。応援しております。 (2021年3月12日 2時) (レス) id: 7c28523323 (このIDを非表示/違反報告)
はい(プロフ) - サナさん» ありがとうございます。これから忙しくなってくるので更新が遅れるかもしれませんが、今後も読んでいただけると幸いです。 (2021年1月2日 1時) (レス) id: 573ffe8b83 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:はい | 作成日時:2020年12月22日 1時