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そこまできて突然、ポタリ、と音がした。
静寂の世界にそれは酷く響き、なんだろうと朧げに思う。

続いて何かがむせ上がってくる感覚があって、反射的に口を押さえた。吐くというよりかは、咳をする時みたいな息苦しさ。
不思議に思って掌を見やれば、そこにこびりつくのは真っ赤な体液。

それは止まることを知らずに喉から溢れ出て、無機質な灰色のコンクリートに朱い水玉を結んでいく。


血だ。

そう思った途端、背筋を何か冷たいものが這いずり回った。
一瞬にして逆立つ毛、そしてガチガチと音を立てる歯。


鼻を掠めるのは血、そして夏風のにおい。
そう、何処かで嗅いだことがある。

駄目。思い出そうとするな、これは閉じ込めておかなきゃいけない思い出。さっきから警報を鳴らす頭痛、それがそうだって訴えている。


それでも考えることを辞めない頭。
目の前にいた私みたいな人間は、いつのまにか小さくなっていて。
それは何処からどう見ても、赤信号を渡ろうとした時の私だった。


まだ何も知らない、無垢な私。

それがトリガーになったのかもしれない。途端に頭に雪崩れ込んでくる過去の記憶の数々。


気付けなかったんじゃない。気付きたくなかったのかもしれない。
否、気づかないフリをしていた。

この感覚は、あの記憶。あの蒸し暑い夏の思い出。その中の、お母さんの匂いだ。

私の大嫌いなお母さんの。嫌いで嫌いでたまらなかった彼女の。


それがプラグの中の感覚と、ぴったりと重なる__


いやだ、もう思い出させないで。

そう崩れ落ちるように地面に蹲れば、目の前に立っていた彼女はクスクスと笑った。
恐る恐る見上げてみると、そこには歪んだような醜い笑い。


その小さな口が唐突に開かれる。

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アオウサギ(プロフ) - 更新お待ちしております!!!!!!!ー! (9月7日 17時) (レス) id: 8561e7888e (このIDを非表示/違反報告)
ゆわ(プロフ) - はじめまして。コメント失礼致します!わたしは1年ほど前にエヴァにどハマりし、また、今再熱したので占ツクで小説を探していたところこちらの作品を見つけました。はい様の文章表現やストーリーがとても好きです。続き楽しみにしております! (2023年2月16日 13時) (レス) @page31 id: 306206b07c (このIDを非表示/違反報告)
こまり(プロフ) - すごく読み応えのある作品で、一気に読み終わりました!更新お待ちしてます。 (2021年8月28日 20時) (レス) id: 92ffc05bff (このIDを非表示/違反報告)
ユウキ - 素敵な作品をありがとうございます。応援しております。 (2021年3月12日 2時) (レス) id: 7c28523323 (このIDを非表示/違反報告)
はい(プロフ) - サナさん» ありがとうございます。これから忙しくなってくるので更新が遅れるかもしれませんが、今後も読んでいただけると幸いです。 (2021年1月2日 1時) (レス) id: 573ffe8b83 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:はい | 作成日時:2020年12月22日 1時

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