防弾妄想集

９ ページ48

周りから甲高い声が聞こえる。

耳から、誰かの鼓動が聞こえる。

すぐ上から、荒い息も聞こえてくる。




HS「A！トイレあった！！」




………やっぱこいつバカだ。

普通彼女が調子悪そうだったらトイレより休憩所じゃないのか。

まぁ今回はこれで合ってるけど。



トイレの前で、あたしを降ろす。

周りの視線が恥ずかしくて、できる限りの高速で個室にこもった。




HS「仕事は大丈夫だからー！安心してスッキリしてきてー！」


A「だまらっしゃい！！！」





いけない。つい叫んでしまった。

でも、だとしても、



A「姫抱きなんてことしといて行き先がトイレってなんなの………」




少しでもキュンとしてしまったのがバカみたいじゃん。



しばらくそこから出られなくて、出た頃には仕事はもう終わりそうな時間だった。

重い足で、PDに近づく。



A「PD。さっきはその………仕事すっぽかしてしまってすみませんでした」



深々と頭を下げる。

PDは笑いをこらえるかのような、そんな顔をして



「いや、事情はなんとなく把握はしてるし……あの後で仕事に入れっていうのも、なぁ？」



A「お見苦しいものを見せてしまいましたっ…！」




できることなら今すぐここから逃げ出したい……！！

とうとうPDは吹き出して、仕事は代わりにホソクがやったから心配するな、と言ってくれた。

PDのほうが乙女心をわかっているというのが、虚しい。

車に戻ると、他の女性スタッフがわっと駆け寄ってきた。




「Aちゃん、大丈夫？心配したよー」


A「ええ、まあ、はい。ありがとうございます」


「Aもしかしてさ……生理？」


A「な、なんで知ってるんですか？」


「ホソクがすごく心配してね、Aがこうこうこんな感じなんだけどどうすればいいかって女性スタッフに片っ端から聞いてたからねー。なんとなく察しはつくよ」


A「そ、そうですかっ……」







嬉しいような恥ずかしいような変な感じ。

ただ、今のこの感情は…嬉しい？かな？

１０→←８

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す