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暮らしは決して裕福ではなかった。
けれど不幸ではなかった。
天然な母とおおらかな父親は俺にたくさんの愛情を支えてくれた。
家族全員音楽が好きで、母はとくに歌がうまかった。
家にはいつも音楽と笑顔が溢れていた。
けれどある日母が体調を崩した。
母は最初こそ気丈に振る舞っていたものの、体調が回復することはなく病院で過ごすようになった。
暮らしはさらに貧しくなった。
生活費を医療費にあてるために、もともと働き詰めだった父はさらに仕事を増やした。
俺も母が回復するようにと中学からバイトを始めた。
だがそんな献身も虚しく母は静かに息を引き取った。
そしてその後を追うように父も体調を崩し帰らぬ人となった。
父は亡くなる寸前、始めて俺にごめん、と呟いた。
あの時、夜から朝まで、気を失うまで慟哭し涙を流したことを覚えている。
けれど、いつまでもそうしてはいられないと高校へ言って欲しいと言った両親の期待へ応え、これを弔いとする為に高校進学を決意した。
だが、祖母や祖父といった親族との繋がりは物心ついた時にはなかったため、頼れる人などいなかった。
なんとか慈善団体へと掛け合いながら、その後俺は中学を卒業し、高校卒業の支援を受けながら高校へ通っていた。
全ては両親との約束を果たすために。
「あの時、もっと母の隣にいたら、もっと頑張ってたら、って考えると止まらなくて･･･」
過去の話と共に内に秘めていた、自分でも認識しないように封じ込めていたような感情が口から溢れ出して止まらなかった。
臣さんは俺の吐露を静かに聞き、俺を抱きしめ、時に背中や頭を撫でながら聞いてくれていた。
やがて言葉を紡げないほどに胸がつまる。
「壱馬はえらいな」
静かに聞いていた臣さんが小さく言葉を発した。
「壱馬は優しい。壱馬は頑張ってる･･･いつも精一杯だ」
その言葉を聞いた瞬間、涙が頬を伝うのがわかった。
1度出た涙は止まることを知らず、頬を伝って臣さんの肩口へと消えていく。
やがて臣さんは俺を宥めるように歌を歌い始めた。
それはよく母が歌っていた大好きな歌。
涙が溢れて、溢れてついには嗚咽まで出始める。
優しいメロディにのった澄んだ歌声と臣さんの体温は俺の全てを優しく包み込んでくれるようだった。
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AiRI(プロフ) - 体調には気おつけて頑張ってくださいね！更新楽しみにしています！ (2020年8月4日 21時) (
レス) id: 5b08b0da4b (このIDを非表示/違反報告)
ライム(プロフ) - 頑張ってください\(((o(*ﾟ▽ﾟ*)o))) (2020年8月1日 23時) (レス) id: 73c5786c3d (このIDを非表示/違反報告)
ライム(プロフ) - この小説大好きなので、更新待ってます！ (2020年6月30日 7時) (レス) id: 73c5786c3d (このIDを非表示/違反報告)
AiRI(プロフ) - 更新楽しみにしています！これからも頑張ってください！ (2020年6月30日 7時) (レス) id: 5b08b0da4b (このIDを非表示/違反報告)
ライム(プロフ) - 勝手にすみません。もうお話更新なさらないんですか？ (2020年6月5日 17時) (レス) id: 73c5786c3d (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あいんしゅ | 作成日時：2020年3月1日 15時
