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静かに呟いた声は小さく、すぐに宙に溶ける。
「というか、その様子なら自分のことを可哀想なんて思ってないんだろう?」
「俺は自分が可哀想とは言うてへんで」
彼が口の端を上げる。
「他人から見ればそう見えるんちゃう?って言うただけや」
「・・・・・全くの詭弁だな」
「勘違いしたのは先生やん」
静かに彼はくすくすと笑う。
「じゃあ君は可哀想に見せるのが上手い、ということだね?」
「その言葉めっちゃ悪意あるなぁ」
「はっ、当然」
嫌いな人間に愛想など不要。嫌われたら万々歳。
「ま、ええけど。むしろ閉じ込められとる先生の方が可哀想やし。あ、カワイソウでもあるわ」
「私が、閉じ込められてる・・・・・?」
平然と言う彼の言葉がわからない。首を傾げていると、彼は満足そうに笑う。
「知らんって幸せやなぁ、先生。な、俺が教えたろか?」
柔らかな笑みは、私には悪魔の笑みにしか見えない。そして、彼の発言は宛ら神からの啓示だった。つい、教えてほしいと言ってしまいそうになる。
「いや、自分で見つける。君から答えを提示されるなんてごめんだね」
横に首を振ると彼は楽しげな笑いを溢す。
「っはは、先生ならそう言うと思ったわ」
一瞬の沈黙後。
「でも、隠す身にもなってほしいわ」
彼は憂いたようにため息をこぼす。
「それは君が勝手にやってることだろ」
「隠すって結構メンタルにくるんやで?全部話したいって思っても、先生にはここに居てほしいし」
私としては勝手に喋ってもらいたいが、彼の様子から察するにそうはいかないのだろう。
「第一、先生だけは割り切れてへん。俺は自分と違うって」
妖しげに、桃の目が光る。
「だから俺と会話する。心を無意識に理解しようとする。先生の方こそ、カワイソウやなァ」
まるで嘲るような笑みを浮かべた彼は、そのままくつくつと笑う。私は彼の言う『かわいそう』がどんな意味を秘めているのかわかったような気がした。だがニュアンスだけしかわからないソレを、私は吐き出すことできずただ思考を放棄するだけだった。
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哀願型
同情心を煽り意識を向けさせる
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ばぐのばく(プロフ) - スマホ依存ゴリラさん» ご指摘ありがとうございます・・・・!すっかり忘れてました・・・・ (10月9日 22時) (レス) id: c1506ac0fe (このIDを非表示/違反報告)
スマホ依存ゴリラ(プロフ) - オ.リフラ立ってます....! (10月9日 22時) (レス) @page2 id: 977a8da232 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ばぐのばく | 作成日時:2023年10月9日 14時