▶︎黄のポメラニアン ページ5
人間は元来、良い物を独り占めしたい生き物なのだろうか。彼を見ていると、そんな純粋な疑問が湧いてくる。
「なぁ先生」
純粋そうで、蒲公英のような柔らかい瞳が私を見る。
「先生は、誰かが羨ましいとか思わへんの?」
その目は、不満に染まっている。
「誰かを羨んだところで、私はその人になり得ないんだから無駄だ」
そんな目を逸らしながら、私は否定する。
「ふーん。俺は羨ましく思うわ」
黄色い目が、私をまっすぐ見る。
「例えば、先生が誰かの指示を聞いてるのとか」
「っ・・・・そう、か」
言葉が詰まる。
「先生を独り占めとか、・・・・ほんッま、嫉妬でおかしなりそう」
ぎり、と歯ぎしりに聞こえそうなほど、彼は顔を歪めている。
「先生は、俺がいらんの?あんま来てくれへんみたいやし」
「いいや。そんなことは無いさ」
「ふぅん?そんなことは無い、ねぇ」
彼の疑いの視線が痛い。
「言葉と行動が一致してへんけど?」
「したくてもできない、なんてことはザラにあるだろう?」
薄っぺらい笑みを浮かべて言葉を返す。
「でもいいじゃないか」
声を大きくする。蒲公英の瞳が訝しげにこちらを見る。
「この瞬間だけは、私は君のなんだよ?誰にも邪魔されない。一番になることができるんだ!」
滅多にしない、にこりとした笑みを貼り付ける。
「君は一番が良いんだろう?私の一番が。ならいいじゃないか。何を羨む必要があるんだ?」
暗示をかけるように、語る。話す。喋る。
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ばぐのばく(プロフ) - スマホ依存ゴリラさん» ご指摘ありがとうございます・・・・!すっかり忘れてました・・・・ (10月9日 22時) (レス) id: c1506ac0fe (このIDを非表示/違反報告)
スマホ依存ゴリラ(プロフ) - オ.リフラ立ってます....! (10月9日 22時) (レス) @page2 id: 977a8da232 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ばぐのばく | 作成日時:2023年10月9日 14時