とある研究員の資料 2【実況者】 (ページ30)

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▷ ページ30

「おや、私の言い分は何かおかしいかい？」
「･････いえ、知らないならそのままで」
「君たちは私に隠し事をし過ぎじゃないか？まぁ、言いたくないのなら良いけど」

あの六人に会った時も言った通り、私は脱出しなければならない。ならば、その隠し事も私には関係が無くなる。ここを脱出すればきっと、文字通り、縁が切れるのだから。

「A先生は欲を出さへんなぁ」
「おや私の考えは間違っているかい、ロボロ？欲を出して得することなんて無いじゃないか」
「可哀想なのは先生なんに。アレを知ったら出たないって、絶対言うんに」
「アレ････？というか、私は可哀想でもカワイソウでもない何度言えば･････」
「じゃあなんで外に出たいん」

ぴく、と髪を掻き上げていた手が止まる。シャオロンの言葉は実に的を射ていた。

「･････なんで、だって？外に出たい理由は私にだって知らない。わからないよ」
「そうじゃなくて、外に執着する理由や」

彼の黄色い目は、じっと私を見つめて離さない。どろどろとしたものを感じて、私は自然と視線を逸らす。

「･････それこそ、知らないよ」
「じゃあここに居ようや。理由が無いんやったら変わらんやろ。ここに居て、ずっとずっと暮らそうや」

盲愛、という表現が正しかった。彼らは目の前が何も見えていない。

「そうすれば、独り占めできるやろ？」
「独り占めは、無理だと思うが」

オウム返しをすることしかできなかった。言い返す言葉が見つからないのだ。だが、それはとっくに彼らに見透かされていた。見透かされてしまっていた。

「どこまで先生が頑張れるか見ものやなぁ。ま、すぐに諦めるだろうけど」
「･････本当に、気味が悪いな」

全てを、見透かされているようで。白い紙を挟まれていては、真意が掴めないというものだ。まあそんなことを言ったって、この現実は何も変わらないのだが。

「本当に、君たちとすぐに離れたいよ」

もうすぐ。もうすぐなんだから、私の邪魔をしないでくれ。私は外に出るのだから。それを阻まれる理由は、何も無いのだから。

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ちょっとした小話
可哀想とは、同情し救いを差し伸べようとする心を指す言葉である
カワイソウとは、哀みかつ愛らしくてどうしようもない心を指す言葉である
(あくまでこの小説内のみの言葉です)