とある研究員の資料 2【実況者】 (ページ27)

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「でも今の先生もええなあ！なーんもわからん子供みたいで」
「今の、と言われてもわからないな」
「見て見ぬふりが得意なA先生にとって、わからないって言うのは簡単やろな」
「････････」

当たり前だ。誰が好き好んで怪物の発言をわかりたいと思う？少なくとも私はそうは思わない。理解をしようとする気すら起きない。

「まぁまぁ、その話は後にしようや」

鬱が私と彼の間に入り込んで止める。

「後でその話はできるやろ？」
「せやけど、話す暇なんてあるん？てか、正気じゃなくなるやろ」
「ん〜、なくなったらなくなったでええんちゃう？結局閉じ込められるんやし」

私はそっと足を後ろに引く。いつでも逃げられるように。だが、それが許されるはずがなかった。

「この期に及んで逃げようとするなんて、先生は気丈ですね」
「はっ、逃げることの何が悪いと言うんだ？というか、私に執着する理由がわからないね」
「執着する理由？そんなの決まっとるやろ。俺の場合、その気丈な先生をそばに置いておきたい。それこそお人形のように」

影から溶けるかのように現れた彼、エーミールはいつものような人形を持っていなかった。だというのに、私をどろりと眺める視線がある。ぞっとした寒気が走る。

「全く、私の何が良いんだ？」
「先生にはわからなくても、俺らには良い部分が数え切れないほどあるんだよ。だからこそ閉じ込めて大事にしたくなる」

するりと白い手袋が頬を撫でる。

「あぁ････････次から次へと、本当に鬱陶しい」

恨みがましい声が喉から出る。