とある研究員の資料 2【実況者】 (ページ26)

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「変わってるだけやろ」
「その変わり方が可笑しいんだろうが･････」

何を言っても通じない。というより異常性を理解していない。まぁ、今までの常識が間違っているなんて、誰も信じたくないだろう。

「お、先生、こんなとこに居ったんか」
「･･････やぁ、コネシマ。ここは施設の中でも辺鄙なとこじゃないだろうに」

何か仕組まれているとしか思えない。でなければ、こんな私にとって最悪なタイミングで出てくることがあるだろうか？

「ま、せやなぁ。怪しいって思うのが、普通よな」
「私はそんなこと、一言も言っていないが」
「顔に書いてあんで」

ぐ、と言葉に詰まる。顔に出るのはどうにかしたいものだ。

「で、何か用なのかい？出来れば手短に済ませてくれ」
「多分大先生と一緒やで？こっから出てってほしないって」
「君らはそれしか言えないのか？」
「先生が受け入れへんから言うとるんやろ」
「おや、私のせいにしないでほしいね。君たちの日頃の行いだろう？」

繕うようにくすくすと笑う。どうやら、私にはそれしか自分を偽る手段が残されていないようだ。

「ここに居ることの、何が嫌なんや」
「人間誰しも、必要以上の想いを向けられてほしくないんだよ。鬱陶しくて煩わしい」
「俺に愛を教えたんは先生なんに。先生自身が引き止めてるんと同義やろ」

本当に鬱陶しい。あぁ、こんなところで道草を食っている場合ではない。

「せんせ〜、俺の嫁やってのにどこ行くん？」
「どこに行こうが、私の自由だろうが」

ふわふわとした声が聞こえて顔を歪める。黒い面の奥から、くふくふという笑い声が上がっていた。

「大体、嫁じゃないと何度言えばわかるんだ？」
「んなもん、最初から気付いてんで」
「は、じゃあ何故」
「先生は確かに嫁やない。少なくとも今の先生は、な」

しんぺい神の言葉は、意味不明を通り越して気味が悪かった。人間は自身の理解を越える出来事に出会うと、処理することすらしなくなる。有り難いと感じるのは何回目だろうか。