とある研究員の資料 2【実況者】 (ページ25)

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▶︎演者ページ25

ふらふらと壁を伝いながら歩く。突然告げられた事実に、頭が混乱している。早く、早くこの場所から出なければ。そうしなきゃ、私は壊れてしまう。

「せんせ、そんなに焦ってどうしたん？」

今一番会いたくない奴に出会ってしまった。

「鬱･･･････っ」
「なんや、めっちゃ嫌そうやん」

コツコツと革靴が音を立てる。にこにことした笑みに恐怖すら覚える。

「そ、それ以上近寄るな」
「先生、それは酷いんちゃう？」

ピタリと止まる足音に、やけに素直だと警戒する。彼の唇はにんまりと三日月を描いている。

「俺はただ、仲良うしたいだけなんに」
「仲良く？私を縛りまくっているどこが仲良くなんだ」
「まぁまぁ、そうかっかせんといてぇな」

彼の態度は、まるで幼い子供を宥めるかのようだ。それは酷く心外であったし、やはりそんな余裕そうな態度が不思議で仕方無かった。

「仲良うというか、先生にここから出てってほしくないだけや」
「残念だね。私はもうこの場所に留まりたくないんだよ」
「なんや。そんな嫌なこと無かったやろ」

平然と言ってのけるのが信じられない。

「あれらが嫌なことじゃない？全くどこがだ？」
「A先生本気で嫌がってなかったやん」
「それは････････」

私の言葉は全て業務。つまり、そこに私の感情は乗っていない。だから本気で嫌がっていないと言われれば、その通りだとしか言えなくなる。

＿＿＿それでも私は。

「誰が他人に執着されるのが嬉しいと思うんだ？」

少なくともこの状況は心から嫌いと言える。

「君たちのは歪んでるんだ」