とある研究員の資料 2【実況者】 (ページ21)

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「わからないよ。でも、君たちよりマシという事実がある。それだけでこの場では、私が一番普通なんじゃないか？」
「あははっ、普通じゃないくせに普通っていう先生、面白いね〜」

けらけらと笑う彼の声にうるささすら覚える。

「てか、Broooock！俺の先生、取らないでよ！」
「はぁ？僕の先生だし〜！」
「いや、私は私だが」

仲の良い兄弟の喧嘩のような口論を冷ややかに眺める。

「あ、こんなとこに居たんだ」

さも自分は常識人です、とでも言うような声が聞こえる。

「姿が見えないから、もう脱出したのかと思った」
「ふうん。君の焦ってない様子から察するに、そんなこと思ってないんだろう？」

きんときはくすりと笑う。

「さすが。先生にはお見通しだね」
「私を騙したいなら、演技の一つや二つしてみればいいじゃないか」

彼と会話するのは疲れる。そうにこにことされてしまっては、表情が読めないだろうが。

「君の考えは度々読み取りにくいよ」
「てことは、それだけ俺のことを考える時間が増えるってことだろ？めっちゃ嬉しいな」

話が通じない、と直感的に思う。

「むしろ逆だよ。わからないものはわからないんだから放置。思考から排除するよ」
「･････先生って、尽く俺らと反対の考え方をするよね」
「君たちの操り人形でもなければ役者でもないからね」

私は彼らの思い通りになることを嫌う。だから、私の行動は決して線路のように理路整然とはしていない。それを指摘されたとて、全てを掌握されているかのように感じるくらいだったらチグハグな行動を取る。それほど嫌なのだ。

「君たちは操り人形をお望みみたいだけど、私は縛られたくないからね」
「縛ってる訳じゃないんだけど」

不機嫌そうな声がする。

「俺言ったよねぇ。先生は先生なんだからって」
「だから、私は縛られている訳ではないと？」
「そ。俺の思う先生が、先生の意志でしてんだから縛ってないでしょ？」

彼、きりやんはにんまりと笑う。