とある研究員の資料 2【実況者】 (ページ3)

今日:19 hit、昨日:16 hit、合計:10,283 hit

▶︎橙色の詐欺師ページ3

「先生ぇ、僕、寂しかったんですよぉ〜」

大きな体躯には似合わない、甘い声。

「いつまで経っても来てくれへんからぁ」

私を罪悪感で満たそうとしている声色。

「定期的に来てるだろ」
「それが長すぎるって言ってるんや」

むすっと、幼い子供のように膨らませる顔で、私が陥落するとでも思っているのだろうか。

「決められた通りに来ているだけ。調査するには丁度良い期間なんだよ」
「僕はこんなにも先生に会いたいのに、ですか？」

うるうる、とわざと潤ませた蜜柑色の瞳が鬱陶しい。

「私は別に会いたくないし、君に情なんてものは無い」

人間を操るなら、情に訴えることが一番だと彼は理解している。

「なんで先生は、カワイソウって思ってくれないんですか」
「へぇ。君は可哀想って思ってほしいんだ」

大層上から目線だと思うが、と私は考えたものの気にせず平然と返す。

「先生。先生の可哀想と、俺のカワイソウは多分ちゃうで」

これまでのわざとらしい声色とは一変。真剣な声が彼の口から出てくる。

「私の可哀想と君の可哀想が違う？一体どういうことだ？」

イマイチ理解ができず、首を傾げる。

「あぁ、わからないならいいんですよ」

ふふ、と彼は意味ありげな笑い声を零す。

「君が話したくないなら、まぁ」

無理矢理話をさせる意味も無い為、私は無視する。

「先生の言う可哀想は、むしろ先生に当てはまると思うんですよ」

にっこりと表現するに相応しい彼の笑み。

「私は、別に不憫などではないんだが」
「俺から見れば十分可哀想ですよぉ」

妙に鼻につく口調に私は顔をしかめる。