とある研究員の資料 2【実況者】 (ページ14)

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そんなことを考えていると、私の足元からカチッと小さな音がした。反射的に飛び退くと、そこにあったのは地面に向かって広がる網。獲物を捕らえる気満々で、私はそこまでして捕らえたいのかと口の端をひくつかせた。同時に聞こえる特徴的な声。

「ｱﾚ、A先生引ｯｶｶﾗﾅｶｯﾀﾉ？」
「････生憎ね。やっぱりこれは君が仕掛けたものか」

緑色の魔女帽子と全身を覆う白い服を揺らす彼、緑色は少し不満そうに頬を膨らませる。

「ﾂﾏﾝﾅｲﾉ」
「そりゃ、命の危機だからね。君の言う面白い展開になんかなる訳ないだろ」

網を持って、そこらへんに放る。

「私は捕まる訳にはいかないから」

私の力強い宣言とは裏腹に、彼は冷たい視線を送る。

「････先生、気ﾂﾞｲﾃﾙﾃﾞｼｮ」

嫌な汗が背中を伝う。

「････一体、何にだい？」

彼はつまらなそうに口先を尖らせ、失望にも似た声を漏らす。

「気ﾂﾞｶﾅｲ振ﾘｼﾃﾙﾅﾗｲｲﾔ」

彼は機嫌を損ねたようにプイ、と顔を背けると、私が再度尋ねてもそのまま黙りこくってしまった。どうしたものか、と考え込んでいるとやけに拍子抜けした声が耳朶に届く。

「あら、どりみーもう見つけたん？」
「ﾝ。捕ﾏｴﾗﾚﾅｶｯﾀｹﾄﾞﾈ」
「それでも足止めしてたんやろ？ナイスやん！」

その嬉しげな声を聞きながら、私はただひたすらに不味いと思っていた。緑色だけならまだしも、金豚きょーは不味い。なぜなら、私は単純に彼に力で勝てないからだ。だから、私はそろりとその場を後にしようとした。

「おい、ちょお待てや」

それだけで震え上がるような、低い、怒りを含んだ声。

「っ････何だい」
「なんで逃げるんや。何もしてへんやん」
「まだ、だろう？」
「まだなら、するかしないかわからんやろ」

彼の言うことは尤もで、私は唇を噛み締めた。