貴方不足です、抱きしめてください。-another story-【そらる】 (ページ23)

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Aside

『ナレーションにも挑戦してみたいですね』

彼方くんがZIPに出てる。

前の放送のあとも、今日の放送の時も、Twitterで反響があり、｢そらる｣はもうみんなの人気者。

私が身近な存在でありたい。

けど、リスナーや彼方くんにも迷惑をかける。

近いと思っていたのに、手が届かない存在。

｢ああ、遠いな。｣

ｺﾝｺﾝ

誰かが自室のドアをノックした。

｢誰か｣といっても、それは彼方くんしかいないのだけれど。

そ｢A｣

｢...｣

そ｢独り言だから無視してもいいよ｣

｢...｣

そ｢俺は、どんなにみんなが俺のことを好きになってくれても、嫌いになっても、Aの隣にいたいし、Aに隣にいて欲しい。｣

｢...｣

そ｢Aが遠いと思うのなら、近くなれるように努力して欲しい。俺も努力する。Aとまた、隣で2人のペースで歩けるように。｣

｢...！｣

そ｢ZIPに出て、嬉しいことにたくさんの人がコメントしてくれた。

でも、俺は、Aに｢かっこよかったよ｣って心から言って貰えた方が何倍も嬉しいかな。｣

｢...。｣

そ｢独り言終わり。｣

｢...ねぇ｣

そ｢ん？｣

｢...私が、隣にいてもいいの？

彼方くん...いや、そらるさんはもう有名なファンがたくさんの歌い手。相方のまふくんだって爆発的人気で...何も出来ない無力で地味な私が、彼方くんと一緒にいてもいいの...？｣

そ｢いいに決まってる。いや、いて欲しい。

Aが立ち止まったなら手を取りに行くし、Aが前を歩くなら、Aに追いつくまで走り続ける。

Aと同じペースで、俺ららしく歩んでいきたいと俺は思うよ。｣

｢本当...？｣

そ｢本当。

それから、リスナーさんだって認めてくれた。
本当にこれから、世の中の人が、｢ネットで活動する歌手｣を認めてくれるように活動するために、Aが隣にいて欲しい。｣

｢...彼方くん｣

私はゆっくりドアを開けた。

彼方くんは優しく微笑んでいるのに対し、私は涙でぐっちゃぐちゃの顔だった。

｢彼方くんが遠くに行ってしまいそうで...追いつけなくなりそうで...触れることもできなくなりそうで...怖くて悲しかった。｣

そ｢うん｣

｢彼方くん、ありがとう...大好き。｣

私が隣にいてふさわしいような人間に、いつかなれるといいな。

＊＊＊

わかりにくいのなんのその