君を、想ふ -北藤-

31 ページ31

最近…頭が痛い。

突然、そうなることもあれば。

少しずつ…ジワジワと長時間痛い時もある。

今だって、頭のど真ん中を針で突っついてくるような痛みが襲う。

痛みを和らげるために、頭を叩いたり、左右に振ったりする。

でも、取れない。痛みが消えない。

…怒ってるのかな。

記憶のある俺が…記憶の無い俺に。

早く、場所を代われって。

薬を飲んで痛みを誤魔化す。

まだ、皆といたい。

…いつまで？

北山だけじゃない。

皆が必要としてるのは…記憶喪失じゃない俺。

記憶がある方が必要とされてる。

じゃあ…俺は？

記憶の無い俺は…いらない？

怖い…居場所を取られるの。

「やだ…やだよっ」

頭を抱えて蹲る。

「ただいま〜……藤ヶ谷っ？」

「怖い…っ」

「どうした！？」

「皆が必要としてるのは…っ、俺じゃないっ！記憶がない俺は…いらないのっ？」

「落ち着け」

肩を掴まれて、北山と目が合う。

思い出したらきっと……。

記憶の無い俺は…消えてなくなる。

「思い出したくないっ！」

叫んだ時、北山が寂しそうな顔をした。

言っちゃいけない言葉だった。

誰よりも、記憶が戻ることを願ってる北山に。

思い出したくない、なんて…。

「ごめんなさい…今の、忘れて」

「藤ヶ谷…」

「嘘だよ。早く、記憶が戻るように頑張るから待ってて。必ず思い出すから」

それまで…北山のそばにいさせて。

消えるその瞬間まで…北山の瞳に映りたいから。

消えたくないけど…早く思い出して、北山を楽にさせてあげたい。

皆の、本当の笑顔が見たい。



痛みの間隔がだんだん短くなって…狭くなって…痛みは長く続く。

夜中でも関係ない。

痛くて目が覚める。


「病院行こう」

北山が言い出した。

「大丈夫だよ」

「頭、痛いんだろ？夜中も起きてるし…」

気づいてたんだ。

でも…検査ついでにどうすれば記憶が戻るか、先生に聞いてみよう。

「わかった。行く」

北山と一緒に病院に向かった。

32→←30

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す