君を、想ふ -北藤-

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車が着いて、一足先に降りた。

「北山さん！」

巽さんに呼ばれた。

「こっちです！」

走って追いついて、後をついて行く。

巽さんに続いて、部屋に入ると、ベッドには頭に包帯を巻いた姫が眠っている。

「殴った犯人は…未成年だそうです。人を殺せるなら、誰でもよかった…と」

誰でも？

なんで姫なんだ。

その前に、なんで旅行に行かなかったんだ。

横尾さんと行ってれば…それ以前に、俺が仕事受けないで一緒に行ってれば。

あの場所で、姫が殴られることもなかった。

ドアが開いて、白衣を着た医師が顔を覗かせる。

「真砂」

巽さんが頭を下げる。

「初めまして、真砂と言います。巽とは高校時代からの腐れ縁でね」

そう言われて、会釈した。

「藤ヶ谷さんの頭部のレントゲン検査をしました。頭は少しの傷でも血がたくさん出ます。力はそれ

ほど強くなく、手加減しての殴打の傷でした。早く傷が塞がるように細かく縫いましたので、様子を

見て退院の日を決めましょう」

「ケガは頭なんですけど、障害が残る…ようなことは？」

巽さんが先生に聞いた。

「脳波にも異常は見られませんでしたが、目が覚めてみないことには何とも…」

そう、先生が言葉を濁した。

足がフラついて、壁に寄り掛かる。

「北山さん、大丈夫ですかっ!?」

「…はい」



頭を抱えながら、ベッドに眠る姫を見つめる。


早く…早く、目を覚ませ。


そして…俺を見ろ。


許してくれるまで何度でも謝るから。

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