甘い血を吸わせて -藤北-

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〜太輔Ｓｉｄｅ〜

俺は、ヴァンパイア。

いわゆる吸血鬼ってやつ。

十字架とニンニクが嫌いで、太陽の光を浴びると消えていなくなっちゃう？

そんなのは妄想の中の話。

現実に、俺は太陽の下でも生きてるし、消えたりしないし、苦しくもない。

そして、噛んでも血を吸うだけ。

相手が同じヴァンパイアになる…なんてこともない。

家族が吸うと、相手も吸血鬼にして不老不死の体になっちゃうみたいだけど。

俺は違う。

噛まれた相手の記憶が無くなるだけ。

誰も、俺のことを覚えてない。

俺の存在をなかったことにされてしまうんだ。


初めて…好きな人の血を吸った。

そしたら…それまでの記憶を失くしてて。

誰？って言われた。


俺は…誰の記憶にも残らない。

ただ、生き血を吸って生きるだけ。


今日もまた、血を求めて夜の街を彷徨う。

白い首に牙を立てて、血液を飲んだ。


ジュルルル…。


不味い。

美味しいって思ったことなんてない。

不味いけど、飲まなきゃ死んじゃうから。

あ、体が消滅するんじゃなくて、おなかが空きすぎて死んじゃうっていう意味ね？

カタッ。

音がして振り返る。

そこには…背の小さい男子が立っていた。

「…見たね？」

「わあぁっ」

逃げるその子を追いかけて、腕を掴んだ。

怯える表情…いいね♪

ビルの壁に張りつけにして抑え込む。

「ねぇ…俺が血吸ってるとこ、見たよね？」

「だっ、誰にも言わないからっ(´;ω;｀)」

「そんな怯えた顔しちゃって…俺のこと、怖い？」

「…え？」

「そんなに怖がらないでよ…どうせ、俺のことなんて、皆忘れちゃうんだから」

「…どうしたの？」

「…何が？」

「どうして…泣いてるの？」

頬を濡らす…涙。

「…はっ」



なんで、泣いてんの？俺。

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