声を失った姫 -北藤- (ページ29)

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～宏光Ｓｉｄｅ～

目を覚ますと、俺はたいの手を握っていた。

そんな俺達の手を引き離そうと躍起になっている横尾さん。

ちょっと。

「何してんの、わた」

「何してんの、横尾さん」

俺とたいの気持ちがシンクロして横尾さんにツッコミを入れた。

「手放してよ、わた」

「手放してよ、横尾さん」

また、シンクロ。同じ夢の中にいたからか、今まで以上にないシンクロ率。

っていうか…太輔の声が聞こえる。

「太輔…？」

横尾さんの声、震えてる。

「何？」

「声…出てる」

「…え？」

太輔が自分の喉を手で押さえて、発声練習する。

「ひろ…聞こえる？」

ちゃんと、姫の声が聞こえる。

「ああ…聞こえるよっ」

泣きそうだ…。

目の前で繰り広げられる横尾さんと姫の抱き合い公開ショー。

横尾さん、嬉しいのは分かるけど、ここには２人以外にも俺達がいるんですけど。

存在をお忘れですか？

「「「「あの～、俺達もいるんですけど～」」」」

ニカ千、宮玉がハモる。

俺も、横尾さんの目を覚まさせなきゃ。

「横尾さん、たいから離れて(#^ω^)」

すると、しぶしぶ離れていく横尾さん。

「わたっ、どこ行くのっ」

それを引き止める姫。

……おい。

「たい…横尾さんから離れて」

姫にも釘を指したのに、離れようとしない。

「もうちょっとだけっ」

……仕方ねぇな。

なんて、俺が許可したもんだから。

「じゃあ、俺も～」

ニカが横尾さんの次に、姫を抱きしめる。

「おい、コラ…ニカ(# ﾟДﾟ)」

「え～、横尾さんは良くて、俺達はダメなの～？ズルい～」

そういう事じゃねぇんだよ。

メンバーが次々と姫に抱きつく。

はぁ…。嫉妬でイライラする。

心配かけたんだから、許してやりたいんだけど…俺の、ヤキモチのお餅が顔を出す。

そして、メンバー一人ずつ抱きしめ返す姫にも嫉妬する。

次は千賀。

なんと、たいの頭を撫で始めた。

「ガヤさん、おかえり～。体、大丈夫？痛くない？」

「うん。大丈夫だよ」

おい、千賀。俺には労いの言葉はないわけ？

完全スルーの千賀の次は玉。

「次は、俺～♪」

玉は…しゃあない。許す。

皆に心配かけたけど、一番は、玉だから。

藤北と同じでセンターを背負っていた玉のプレッシャーは計り知れない。

明るく振る舞ってるけど、真っ赤な目をしてるから、たくさん泣かせたし、泣いたんだろう。