声を失った姫 -北藤- (ページ22)

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～太輔Ｓｉｄｅ～

目を覚ますと、皆が顔を覗き込んでいた。

「おはよ、ガヤ。大丈夫？」

玉の腕を掴んで起き上がる。

どうして…？ひろもわたも、マネージャーもいない。

「ガヤ、ここに居てね」

玉の言葉で分かった。

あの人に会いに行ったんだ。

「ガヤっ！」

皆の制止も振り切って別室に向かって走った。

会うのは、怖い。

でも、それよりもひろが心配だった。

何かされたら！？また、俺のせいで傷つけてしまう。

あの日の…ひろの背中に突き立てられたナイフの傷は今も消えずに残っているから。

ひろ…待っててっ！

ドアを開けた。ひろの姿を見て安堵する。

良かった…まだ、何も起きてない。

「たい！！部屋に戻ってろ！」

ひろが怒鳴ったけど、出ていきたくなかったから、俺は首を振って断った。

「ゴメン、みつ…っ。ガヤが目覚ましてすぐに部屋飛び出しちゃって…っ」

追いついた玉がひろに説明する。

「声が出ないって、本当なんだね。あの日、俺が嫌いって言ったからだよな？」

俺と同じ声で言われて、体が震える。

「自分と同じ声で、自分の声否定されてどんな気持ちだった？」

どんなって…最悪の一言に尽きる。

「声が出ないのは可哀想だね。俺が代わりにキス〇〇に入ってやろうか？」

入ってやろうか？

俺の居場所を盗るつもり？

今まで皆と一緒に歩いて来た道を、この先に続いてる未来の道も、奪われるの？

俺の声だけじゃ、足りない…？

嫌だ…嫌だよっ！俺の居場所を盗らないでっ！！

心臓がギシギシを音を立てて軋む。

そのうちにズキズキに変わって大きな痛みが襲ってきて意識が遠のく瞬間、ひろが胸を押さえて倒れ

るのが見えた。

ごめんね、ひろ…俺の痛み、伝わっちゃったね。

ごめんね、居場所まで盗られたらもう…無理。耐えられないよ…。

そこで、俺の意識は深い闇の中に沈んでいった……。