声を失った姫 -北藤- (ページ17)

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～太輔Ｓｉｄｅ～

ひろと楽屋に入ると皆が挨拶してくれた。

声が出なくてもいつもと変わらない対応。まだ、大丈夫。皆はここにいてくれる。

俺を必要としてくれてる。

わたの隣に座ると、健永が隣に来て俺の腕に絡んで体を倒してきた。

「…おい、千賀。俺の目の前で何してくれてんの？離れてくんない？」

ひろが健永にヤキモチ妬いてる…♡

ここは仕事場だから、ひろに抱きつきたいけど我慢する。

その代わり、メンバーが入れ替わりでくっついてくるから楽しい。

「ガヤ～、次は俺～」

俺のとこに来ようとした玉を宮田が止める。

「ちょっとっ！お玉のシンメは俺でしょっ」

「そうだよ。だから何？」

いつもなら、否定する玉が素直に受け入れたから、その反応に驚いて固まってる宮。

「ガヤのそばにいたいの。いいだろ？お前とはいつも…一緒に居るんだし……(照)」

「お玉ぁ～」

抱きつこうとした宮田をかわして俺のとこに来た。

今日は、皆順番にくっついてくる。何でだろう、久しぶりだからかな？

それを陰でいじいじと拗ねながら俺を見てるひろと目が合った。

隅っこで小さくなっていじけてる。

『我が儘、許して？』

そう口で伝えると、ひろは仕方ねぇなって頷いてくれた。

衣装とメイクの準備を終わらせて、準備ＯＫ。

久しぶりの仕事に緊張する。

撮影はカメラの前でポーズを決めるだけだから、大丈夫だった。

雑誌の撮影が終わって、次は取材。

楽屋で待機してる間に、一番手の健永に今日のテーマを聞いた。

『３日間の休みをもらったら、メンバーとどこに行くか？』

ひろが取材から戻って来るメンバーに聞いていく。

３日間…どこ行こう？

考えているとひろに話しかけられた。

「たいは、メンバーとどこ行きたい？」

あ、行きたいとこ決まった…。

「同時に言ってみるか？」

ノートに答えを書いた。

「せ～の……温泉っ」

ひろが俺の答えを同じ場所を言った。

さすが、俺のシンメだ。

嬉しくて、笑顔が零れる。

「いつか、一日でもいいから皆と一緒に行けたらいいな」

現実としては、今はそんなこと無理だけど…いつか、いつか皆と一緒に行きたいな。

そこへ、スタッフさんがひろを呼びにきた。

手を振ってひろを見送る。

「太輔。ノートに熊書いてみて」

わたが話しかけてくる。

俺は取材の時に見せる言葉のページの隅っこに、熊の顔を書いたら、皆に爆笑された。

この後に恐怖と絶望が訪れるとも知らずに…楽しんでいたんだ。