キス限定 -藤北-

＊ ページ43

優しくて…あったかい人。

渉のいいとこしか浮かばない。

こういう時は、相手の悪口を言うんだろうけど。

何もない…言うことがない。

言うとすれば…。

「もう…ノーマルの人は好きにならないっ！」

真っ暗な空に叫んだ。

「誰も…っ、好きにならない…ぃ(´;ω;｀)」

涙が溢れる。

嘘…一人で生きていけない。

「誰か…ぁ、俺を好きになって…っ、俺だけを見て…ぇっ」

言いながら、缶ビールを空にしていく。

「一人は…やだ…ぁ、誰か…俺を、必要として…」

眠くなってきて、体が傾いていく。

「…ん…あったかい…」

人肌を感じて、頬を摺り寄せる。

そのまま…しがみついて眠りについた。

鳥の声に意識が浮上して目を覚ました。

「…え？」

自分の家…じゃない、天井。


ガバッ！


飛び起きると、ベッドの上。

俺の家じゃない。

じゃあ…誰の？

「痛…っ」

飲み過ぎで頭が痛い…(´;ω;｀)

こめかみを押さえて唸ってると、ドアが開いた。

「起きた？」

背の高い顔立ちの整った男子が入ってきた。

「あ…うん。ここはどこ？」

「俺の家だよ。酔いつぶれちゃったから運んで来たの」

ベッドの端に腰かけて、俺に薬と水を差し出される。

「名前は？」

「…北山 宏光」

「俺は俺は藤ヶ谷 太輔。年は２５。北山は？」

「…２７」

「見えないねｗｗ」

ハッキリ言われた。

でも、喉を鳴らして笑うから…からかってるわけじゃないって分かる。

「公園でヤケ酒？理由聞いてもいい？」

「…失恋、したんだ」

「そんなに好きだったんだ？」

からかうでも茶化すわけでもなく、聞いてくる。

「…凄く…すご〜く、好きだった。女の子に取られちゃったけど」

「…え？」

「俺の好きな人…男なの。引いた？」

「ううん」

「…ありがと。引かないでくれて。薬と水も」

コップを返す。

「…ずっと、泣いてたね」

そう言って…目元に触れる藤ヶ谷の手。

「ごめん…ベッド占領しちゃって」

「抱きしめて寝たよ？」

「…え？」

「しがみついて泣くから、ぎゅ〜ってしてあげた( *´艸｀)」

「男抱きしめて…気持ち悪くないの？」

「北山は小っちゃいし可愛いよ？」

渉と、同じことを言う人だ。

「昨日、隣に座ったら体が傾いてきて、俺の肩に頭乗せて、俺にしがみついて寝ちゃったから、ここ

まで運んできたんだよ」

「…そうなんだ。ごめんね、重かったでしょ」

「軽すぎるよ。もっと食べなきゃ」

そう言って手を掴まれる。

「ご飯作ったから、一緒に食べよ♪」

「わっ！」

ベッドを出て、部屋を出た。

＊→←慰めのキス

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す