キス限定 -藤北-

＊ ページ16

着替えて、アラームをセットしてベッドにダイブ。

あの人…どこかで会ったかな？

俺のこと、学生だって知ってたし。

帰る時間が違うなんて…やっぱり、いつも買い物してくれる常連さんなのかも。

名前も知らない彼のことを思いながら…眠りについた。


次の日。

せっかく、アラームをセットしたのに消してまたセットして…それを何度繰り返しただろう。

家を出たのは、９時過ぎ。

ちょうど休み時間で、渡り廊下を走っていると、女子の歓声に足を止めた。

一人の男性が女子に囲まれてる。

「……えっ」

その人を見て、窓にへばりついた。

だって…。

「同じ…大学だったんだ」

昨日、俺を助けてくれた彼は、経済学部の人。

俺は、法医学部。

同じ大学に通いながら、法医学と経済は接点がない。

冴えない俺とは真逆の人。

たくさんの人に囲まれて…。



キラキラ輝いた世界にいる彼。





どうしてくれるの？




昨日のキスが忘れられない。




彼と目が合った。



高鳴る鼓動。



昨日のキスを思い出して、体が熱くなる。



『あなたのせいで…昨日のキスが忘れらない』



そう、唇で伝えた。



多分、俺が何を言ってるのか分からないだろうけど。




『……………………』



彼の唇を読んだ瞬間、俺は彼のもとに駆け出した。

返ってきた答えに、心が震える。


彼を求めて、体が勝手に動く。



『キスしてあげるから、こっちおいでよ』



(彼ともう一度…キスしたい)

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