キス限定 -藤北-

忘れられないキス　※ノンリアル ページ14

〜宏光Ｓｉｄｅ〜

都内の大学に通いながら、コンビニでバイトをする毎日。

今日は残業を頼まれて、いつもの時間より２時間も遅くなった。

時刻は午前２時過ぎ。

あんまり、遅くなりたくなかった。

この時間は…ほら、幽霊が出るって言うし。

俺、幽霊苦手だし。

でも、店長が一つ弁当を持ってっていいって言うから、迷わず焼肉弁当を選んだ。

弁当の入った袋片手に、気分良く家路に向かう。

細い道を歩いてると、前から歩いてくるフラつく足取りのスーツを来たおじさん。

酔っぱらってる…。

道の端っこを歩いてたのに、なぜか、こっちに来る。

立ち止まると、お酒の匂いをさせて近づいてきて…持っていた鞄を胸に抱きしめた。

「可愛い姉ちゃんだね〜」

俺を女性と勘違いしてる。

背は小っちゃいけど、これでも男だ。

パシッ。

腕を掴まれる。

「離せ」

「何だ、兄ちゃんか〜」

「同じ男なので、他当たってくれます？」

振り払おうとしたけど…離してくれない。酔っぱらってるのに、なんでそんなに力強いの？

「兄ちゃんでもいいや〜、この後飲みに付き合ってくれよ〜」

「断る」

家に帰って寝たい。

そして、今日も大学に行かなきゃいけないのに。

空いてる手で頬を撫でられて鳥肌が立った。

「離せってばっ」

「いい匂いさせて…本当に男なのか、見てあげるよ〜」

胸に抱いていた鞄を取られて、距離を詰められる。

襟に手をかけてボタンを外そうとする。

「なんで、こんな脱がせにくい服着てるんだよ…面倒くさいな〜」

そう言って、抵抗虚しくシャツのボタンが千切れ飛ぶ。

「本当に男なんだね〜…騙された」

「…〜〜…っっ」

その場に座り込む。

騙したって何？

勘違いしたのはそっちなのに…っ。


「何してんの？」


心地良い声がしてそっちに目を向けると…。


顔立ちの綺麗な…青年がいた。


こっちに来て…俺の前に立って、おじさんから俺を隠してくれる。

背が高い…。

「こんな夜中に、学生に絡むなんて…いい大人が何してるんですか。しかも、堂々と路上でパワハラ

とセクハラ。人としてのモラルを問いたいですね」

「何を言って…っ」

「このまま交番に行きます？俺、目撃者だし、証言しますよ。動画も撮ってますし」

「冗談じゃないっ」

「絡んできたのはそっちでしょ。酔ってると言えば許してもらえると思ってるみたいですけど、その

子の状況を見てくださいよ。怯えてるじゃないですか」

＊→←＊

→ 目次へ｜作品を作る｜感想を書く
他の作品を探す