優しさに包まれて… -北藤-

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「嫌がってんだろ」

そう言って松田の体が離れた。

たいぴに背中を向ける…小さなおちび。

「大丈夫か？」

「…どうして」

「ピンクの傘さしてるの何度か見たことあったから…いつもそばにいる親友は？一緒じゃないの

か？」

「わたは…勉強で居残り」

「そうか…」

なんで…助けてくれるの。

過去は…松田に迫られて逃げて…大学の裏山で足を踏み外して落ちた。

雨が冷たくて…一人が怖くて。

そんな時、ひろが助けに来てくれた。

運命だ…って思った。

それが、ひろと付き合うきっかけ。

「家まで送る」

ひろに手を掴まれて我に返る。

「お前に嫌われてても…俺は構いたいんだよ」

嫌いじゃない、大好き。

嫌いなのは、ひろの方でしょ？


『何があっても、俺を信じろ』


ひろの言葉を思い出す。


『俺がお前を愛してる気持ちを疑うな』


何これ。

「邪魔をするな…っ」

松田が起き上がる。

「太ちゃんは俺のものだっ」

「こいつは俺のだ。お前のもんじゃねぇ」

「違うっ」

松田が髪を振り乱して…ひろを突き飛ばした。

「おわっ」

ひろの体が車道に飛び出す。

ダメ。

ひろはこの先、たくさんの人の心を治すの。

だから…ここで死んじゃダメ。

「ひろっ！」

その手を掴んで、ひろを歩道に突き飛ばす。

体に衝撃を感じた。

「藤ヶ谷っ」

目を開けると…すごく近くて、ひろに抱きしめられてる。

「しっかりしろっ！」


体から力が抜けていく。

意識が遠のいていく。

その前に…言わなきゃ。

伝えなきゃ。


頬に手を伸ばして…目を見る。

「ひろ…大、好きだよ」

嫌いじゃない。

すごく…愛してる。

これでいい。



ひろの命が救えたし…ひろの未来を見なくて済む。

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