刑事と犯罪者…と姫の葛藤 ２ -北藤-

たいぴは…おかしいんだ。 ページ3

「このまま一緒にいても、北山さんのケガは治りません」


ケガ…？


え、ケガしてるの！？


「そして、ケガが治ってもまた…勇吾が出てこないとも限らないですし」


ひろとの電話で、今回のことを説明してくれるマネージャー。


待って、待って。


今の話を整理すると…。


ひろがケガをしてる。


そして、それは勇吾が原因。


そして…この足の痣。


これは…躓いてぶつけたんじゃなくて…。


ひろを蹴った時の痣。


こんなに真っ青になるくらい何度も…何度も。


出た結論に、体が震える。


役に引き摺られて、今までひろに受け止めてもらってきた。


記憶がぼやけて靄がかかってるのも…。


勇吾のせい？


怖い…自分が怖い。


台本は読んだし、頭にはそれぞれの役の性格、感情が頭に入ってる。


だからこそ…感情が抜けない。


海野が誰かに殺されて…の撮影した後の記憶が…ない。


たいぴは…おかしいんだ。


感情をコントロールできなきゃ…。


帰っても、また同じことが起きる。


ひろが…ケガするだけじゃ、済まなくなる。


涙が…頬を伝う。


「藤ヶ谷さん、大丈夫ですか」


マネージャーが隣に来て、背中を摩ってくれる。


「…ひろっ」


スマホに呼びかける。


『姫！？帰ってくるよな！？』


帰りたい。


毎日、仕事頑張れるのは、ひろに癒してもらうため。


褒めてもらうため。


なのに…。


ひろをケガさせたなんて…。


「ごめん、ひろ…っ、帰れないっ」


『俺は平気だからっ、帰ってこいっ！』


そんなこと言われても…。


たいぴだって会いたい。


でも…一緒にいたらきっと、ひろは無理に笑顔を見せて、たいぴに気を張るから。


たいぴの前で我慢しちゃうから。


痛いのに…痛くないって言うから。


「今日は…帰らない。マネージャーの家に泊まる」


『じゃあ、明日は帰ってくる！？』


今日明日で治るケガじゃないでしょ。

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