みっくんのお嫁さん -北藤-

たいと横尾さんのご対面。 ページ37

「……ひろっ」

今度はざわめき。

…もう、何なんだよ。

隣じゃ、横尾さんが難しい顔してるし。

たいが走ってそばに来る。

目の前に立たれて分かる。

涙の跡…。

手を伸ばして頬を擦った。

「泣いたんだって？」

「だって…っ、みっくんがいないからっ」

今は、いいか。

みっくん呼びでも。俺がいなくて不安だろうし。

「朝、言うの忘れてたな。俺は隣のクラスだから」

「家でも…ここでも、隣…っ」

俺と同じこと思ってる。

「大丈夫だよ。家で待ってる時より近いし、すぐ会えるだろ？」

「そう…だけどっ」

「何？」

「…寂しいっ」

「俺もだよ。でも、体育の時間は一緒に授業あるから」

「…そうなの？」

「もうすぐ体育祭もあるし」

「…一緒。みっくんと…いっしょ」

こりゃ、聞いてないな(笑)。

「休み時間に、会いに来るから」

「…本当？」

「ねぇ、みつ」

たいと話してると、横尾さんが割り込んできた。

「俺にも紹介して」

「……たい、この人は、横尾 渉。俺の友達。で、俺の隣に住んでる藤ヶ谷 太輔」

お互いを紹介する。

「太輔」

横尾さん、いきなり呼び捨てかよ。

「俺の事は、名前で呼んでくれな」

「…え…っと…わた、る？」

「あ、『る』はいらない。もう一回呼んで」

「……わた？」

「その呼び方でいい。よろしくな」

横尾さんがたいの頭を撫でた。

たいがくすぐったそうに目を瞑る。

ああっ！俺の身長があればやりたかった仕草の一つを簡単にしやがったっ！

休み時間を終了するチャイムが鳴り響いた。

人だかりが引いていく。

「もう戻らなきゃ」

たいが泣きそうな顔をして、俺の手を握ってくる。

「すぐ会えるよ。また後で来るから」

「約束だよ？」

「ああ。じゃあな」

名残惜しく、手を放して自分の教室に戻った。

「みつ」

呼ばれて振り返ると、真剣な表情。

「休み時間に、会いに行くのはやめた方がいい」

「…は？」

古文の先生が入ってくる。

「北山。席に着け。授業始めるぞ」

「…横尾さん。今の、どういう意味？」

「みつ。授業始まってる」

「どういう意味だって聞いてんだろっ！」

声を荒げても、横尾さんは動じない。

「…休み時間に話すから」



こんな気持ちのままで授業なんか受けられるかよっ！

イラッとオーラを出してた俺は、先生に指名されることもなく授業が終わるのを待った。

作者より。→←やっぱ、泣いたか…。

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