今日は ページ16
「みーーんなーーそろそろ並んでねーーー」
C組の控え室にAの間延びした声が響き、｢うーす｣と重そうな腰をあげぞろぞろと外へ出て行くクラスメイト達。
「いいんちょどこ行ってたん？」
「相澤せんせーのとこ」
「ぶれねぇの」
緊張感を欠片も感じない会話が至る所で繰り広げられるが、多分、ヒーロー科2クラス以外はこれがデフォ。そんな中で精神統一したかったらなるほど、耳を塞ぐのが妥当だろう。
部屋の奥を見やると紫色の頭。ありゃあれは気づいてないなとAは奥へと進んだ。
「しーんそ。時間だ、よ！」
「！？いっ、いだだだ…！」
音をシャットダウンし1人入念にストレッチしていた心操のイヤホンを抜き取って、無防備な広い背中に思いっきり体重をかけた。
突然鼓膜が開けた感覚と、馬鹿みたいな筋の痛みとで、プチパニックに陥った心操は普段の気だるげな様子からは想像がつかないほど必死な声を出す。
「胞小まじでお前…」
「人が柔軟運動してたら押したくなるじゃん」
「ドSかよ」
半ば強引に上半身を正常な位置まで持ち上げた心操は鈴の音を転がすような笑い声と一緒に｢はい｣と上から垂れ下がったイヤホンに視線を誘導された。
顔を上げると、蛍光灯の逆光で暗く照らされたAの整った顔が目に映る。起き上がってもなお、肩に触れてる手は離れない。
「緊張解れた？」
Aが肩に体重をかけて彼の顔を覗き込んだ時、イベント事だからかいつもと違う結ばれ方をした長い髪が、肩から滑り落ち心操の頬を掠めた。
残り香のような甘い香りが彼の鼻腔をくすぐる。
｢まぁ…｣なんて曖昧な返事をしながら立ち上がる心操。
いつからか、話すだけで心臓が早鐘を打つようになっている。必死で平静を装っている彼に、生憎気の利いた何かが言える余裕なんて持ち合わせていない。
｢それほんと？顔怖いぞ〜｣茶化してから、扉へと歩き出したA。
徐々に遠ざかる小さな背中を見ていたら、焦燥感に駆られ始めた。
気づけば控え室に他のクラスメイトの姿はない。
何かを言うなら、今しかない。
何かってなんだって、決まってる。裏庭の芝生で、天真爛漫な言葉に押されてからずっと、思ってたこと。
「胞小」
「俺、頑張るつもりなんだ、今日の体育祭。だから、」
今日だけでいい、だから今日は、
「＿＿…見てて欲しい、お前に。」
｢イレイザーじゃなくて｣って台詞は流石に飲み込んで、
首に手を当て目を逸らした。
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うみうし(プロフ) - Ri.さん» 目にとめてくださりありがとうございます！そう言って頂けると励みになります(;-;)今後もお楽しみ頂けると幸いです…！ (2022年2月4日 17時) (
レス) id: 9d72e5d349 (このIDを非表示/違反報告)
Ri.(プロフ) - めっちゃ好みです🤍更新楽しみにしてます⸝⸝⸝⸝⸝⸝♡ (2022年2月4日 10時) (レス) id: cb1ef7c288 (このIDを非表示/違反報告)
うみうし(プロフ) - Tamaさん» 目にとめてくださりありがとうございます…!励ましのお言葉も嬉しすぎて手が震えております…笑更新頻度はかなり低いですが今後もお楽しみ頂けると恐縮です( •̣̣̣̣̣̥́_•̣̣̣̣̣̥̀ )♡ (2022年1月11日 21時) (レス) id: ca17de8c84 (このIDを非表示/違反報告)
Tama(プロフ) - はじめまして！めちゃくちゃ面白いですね！？更新楽しみにしてます…！ (2022年1月11日 18時) (レス) @page20 id: 06f7820e52 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：うみうし | 作成日時：2021年5月4日 18時
