short delusion (ページ5)

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・アンビバレンスページ5

Aside

流星と付き合って5年、同棲して2年。
訪れるはずないと思っていた倦怠期中に友達に誘われた飲み会に居たのが望くんだった。

第一印象は人懐っこい人だなって。
私の愚痴も嫌な顔せず真剣に聴いてくれる彼に好感をもって自分から二件目に誘い、気がつけば彼と夜を共にしていた。

酔った勢いとはいえ流星を裏切ってしまったことに戸惑う私に彼はある提案をした。

内緒にする代わりにこれからも望くんと会うか、流星にこの事をバラすか。

正常な判断が出来なかった私は隠す事を選んで今日まで望くんとの関係を続けているけど、正直流星はこのことに気付いてるんだと思う。
口にはしないけど私が携帯を確認する度に一瞬悲しそうな顔をするから。

そんな顔をさせたくなくて望くんとの関係を続けているのに、バレてるのなら意味がないんじゃないかと思い始めた頃、流星からプロポーズされた。

「Aの全てを受け入れるから、俺と一緒になってくれませんか…？」

”全て”とは浮気の事も含まれているのだろう。
見透かした目に怖くなって涙まで溢れてきて、それを隠すように抱きつくと流星は優しく抱き締めてくれた。

こんな嘘吐きな私を受け止めてくれる流星に甘えてもいいのだろうか。

不安な気持ちを抱えたまま、そっとキスを交わした。

プロポーズから数日が経って、私は望くんと別れようと動き出していた。
もうこれ以上流星を裏切りたくない。その一心だった。

だけど何故だろう。
別れを切り出そうとすればするほど胸が苦しくなる。
望くんに悲しい顔をして欲しくない。笑顔でいて欲しいと願う自分がいる。

「なんか悩み事？」

「神ちゃん…」

お昼休み、いつも一緒にご飯を食べている神ちゃんが心配そうに顔を覗き込んできた。
全て話して楽になりたい、でもこんな話をしたら軽蔑されるかもしれない。そう思うとなかなか口が動いてくれなくて沈黙が続く。

「何に悩んでんのか知らんけどさ、話してみてよ。大丈夫。どんな内容でも俺は友達やめたりせぇへんよ？」

長い沈黙を破ってそう言った神ちゃんは頭を撫でながら優しく微笑んだ。
その顔に安心したのか堰を切ったように涙が溢れ、嗚咽混じりにこれまでの事を話した。

「そっか…。Aは今、誰が一番大事？彼氏さん？それともその浮気相手？」

神ちゃんの問い掛けに即答出来ない自分にまた涙が流れる。
いつの間にかどちらも大切な人になってしまっていたのだ。