maison 17【2】 (ページ6)

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癖ページ6

『やー！A！！また玄関の鍵開けっ放しだったぞ。
いつも閉めろって言ってるのに！』

お茶でも飲もうとキッチンでお湯を沸かしつつぼんやりしていると、突然後ろからジョンハンに大声を浴びせられた。

「…ハニ、びっくりさせないでよ。
インターホンも鳴らさずに入ってくるひとにそう言われても素直に頷けないなぁ。」

キッチンの扉のところで腰に手を当て、苛立った表情で仁王立ちをしているジョンハン。
そしてその後ろから穏やかな笑みを浮かべつつ目の奥に黒いものが見えるジョシュアが顔を出した。

まずい。

『今は僕たちだから大丈夫かもしれないけれど、これがサセンだったらどうするの？Aも女なんだから気をつけなきゃだよ？』

ジョシュアが静かに怒っている。
しかし屁理屈だと言われそうな返事が口から出てしまう。

「平気だって。わたしこんな見た目だし」

『むしろお前のことを男と思ってつけ回してるやつもいるかもしれないんだぞ。』

『そうだよ。せめてオートロックの設定しなよ。』

「大丈夫大丈夫ー。
ほら、お茶にしよう。」

ヘラヘラと応えるとふたりとも釈然としない表情をしていた。

ジョンハンもジョシュアも心配して言ってくれているのは判るのだが、わたしにも理由があって鍵を開けている。

原因は出掛ける時に鍵を持つ事を忘れてしまう癖だ。

オートロックは鍵を持って出掛けるのを忘れたときに困るので設定をしていない。
よって自宅にいるときも鍵がかかっていないのだ。
その策として、セキュリティ万全のこのマンションに居住している。
本当の防犯になってはいないのだが、閉め出されたときの面倒臭さと遣る瀬なさに比べたら比ではない。

管理会社のスタッフに『この家には女性がお住まいの筈ですが…』と訝しげに言われ、本人確認をされる時の忸怩たる思いときたら。

しかし、この駄目な癖が後に面倒な出来事を引き起こすとは微塵も思っていなかった、このときのわたしをひっぱたいてやりたい。

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