�� ページ26
「ごめんよ…。つい、血を流すきみがあまりにも芸術的だったから、筆が止まらなくなってしまって。」
エボルは反省したように眉を下げるが、これはいつものことである。
ヴィンセントがどんな話をしていても、どんな質問を投げかけようと、自分の作品のなかに入ってしまったエボルを引き戻すことはできない。
そんな様子をヴィンセントは「面白くて、いい。」と評価していた。
いわば、二人ともが変人なのであろう。
一通りの治療が終わるとエボルは満足したように「よし」と呟くとヴィンセントの隣に座って言った。
「それで？きみが喧嘩を売るなんて珍しいじゃないか。」
ヴィンセントは足をソファーの肘掛けに乗せ、背中をエボルへ向けて、体重をかける。
エボルはそれを支えながら苦笑した。
「ソフィアさんが絡んでいるのかな。」
「……今日の生徒会長の様子はどうだった。」
ヴィンセントはエボルの質問には答えず、質問を返す。
「やっぱりソフィアさんに関係しているのかぁ」
エボルはヴィンセントを見つめ、そういった。
ヴィンセントは基本的には無口で、無表情、無感情である。
ソフィアでさえ、ヴィンセントがなにを考えているのかわからないことに対し、エボルはヴィンセントがなにを伝えたいのか、なにがしたいのかをしっかりと把握していた。
「会長様は今日もお元気そうだったよ。なんか、手に入れることが難しいって言われてるお菓子をくれたけど…。それが関係してるのかな。」
ヴィンセントを探るようにエボルは静かに言葉をつなげる。
「ねぇ、きみの飼い主は誰かな？」
エボルは西日に照らされながら優しくヴィンセントに微笑みかけた。
ヴィンセントはその質問には答えず、ただ天井を見上げるように、エボルの膝の上に寝転がった。
「会長様はソフィアさんの弱点を探しておいでだよ。ヴィンセント、きみはソフィアさんの弱点を知ってるかい？」
「……あいつは幽霊と雷が嫌いだよ。」
ヴィンセントは無感情にそう答えると、思いついたかのように突然立ち上がり、エボルに挨拶もせず、窓から飛び出すと行方をくらませた。
「……今日はどこで雨風をしのぐのかな。」
ヴィンセントの体温が残る膝を優しく撫でながらエボルは呟いた。
「………ソフィアさんの弱点は、幽霊、ね。」
静かに近づく冬の香りに、暗くなっていく美術管理室でひとり、無表情で天井を見上げる。
このとき彼がなにを思っていたのかは、本人以外、知る由もないのであろう。
fin
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春瀬(ﾊﾙｾ)(プロフ) - 雛月いず/りぃふさん» 勝手に書かせていただいております…。ありがとうございます！頑張ります…！ (2020年12月17日 10時) (
レス) id: 41aa1a2dce (このIDを非表示/違反報告)
雛月いず/りぃふ(プロフ) - わぁっ、ソフィアちゃんとクラウディアCPのお話ですね…！とても素敵で、この先どのような展開になるのかとても楽しみです！無理をなさらない程度に更新頑張ってください…！ (2020年12月17日 7時) (レス) id: 0b050cbadc (このIDを非表示/違反報告)
春瀬(ﾊﾙｾ)(プロフ) - ミヤネコさん» 報告遅くなってすいません！少しだけですがファルくんお借りしました！もう少しファルくんとは絡んでいきたいです><読んでくれてありがとうございます！！！ (2020年12月6日 22時) (レス) id: 41aa1a2dce (このIDを非表示/違反報告)
ミヤネコ(プロフ) - ドミに続きファルまで…！出していただきありがとうございます！いい感じの狂いっぷりですね！ (2020年12月6日 8時) (レス) id: 81f9ac9815 (このIDを非表示/違反報告)
春瀬(ﾊﾙｾ)(プロフ) - 山田中さん» ｯｽｰｰ！考えてみます！！ありがとうございます！！ (2020年12月3日 10時) (レス) id: 4abe4ade3b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：春瀬(ﾊﾙｾ) | 作成日時：2020年11月21日 21時
