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『お久しぶりです、すみません…こんなに遅くなってしまって』
目の前に鎮座する墓石に私は謝罪する。
自然に囲まれ、日向の光が木々の隙間からキラキラと輝くこの場所で【S.ODA】の文字を見つめる。
帰国してすぐ、三者鼎立なんて騒動が起きて中々時間が作れず墓参りにも行けなかった。
『治君の背はとても伸びていて貴方とそう変わらなくなりました。子供っぽさも少し抜けて大人びてきましたよ、でもすっっっごく可愛いんです天使ですよね』
先ずは治君の事を話す。
彼と話す時、私は治君の話題から始まってしまう。彼との共通点がその位しかないのが原因だ。しかし話題が尽きたことはない。
ポツリ、ポツリと様々な事を話した。
治君から進捗報告はされているかもしれないが最近あった事。やっぱり治君の尊さとか色々。
『ーー…あと、文句も言いに来たんです、私。
よくも約束を破りましたね織田さん』
死人に口なし。
返答は帰ってこないがきっと彼が居るなら少し困ったように眉を下げたかもしれない。
不確定な約束だ。
契約書を書いた訳でも、決して破らないようにと口を酸っぱく言った訳でもない。
日常会話で、少し念を押すように一方的に交わした約束事。
◇◆◇
「珍しいな、津島が此処に来るのは」
其の場所は、Lupinというバーだ。
此処では治君、織田さん、安吾さんが3人でよく集まる神聖な場所。
私が滅多に入らない店である。
『そうですねぇ…私、治君の幸せな時間を邪魔したくないので』
「そうか」
『あれ、否定しない??結構傷付くんですけど』
「だが事実なのだろう
それで、本当に何故ここに?太宰は来てないぞ」
『知ってますよ、治君はあと1時間程度でこの店に着きます』
知っているのか、と感心する織田さんにズレてるなぁと笑う。
『織田さん、心の隅に置いて欲しい事があるんですが』
「なんだ」
『治君を置いていかないであげてくださいね?』
私の言葉に理解出来ないのか織田さんは首を傾げた。
『あの人は、子供なんです。ひとりぼっちで乾いた世界で生きている。私は、彼に救われました。彼という光がいるから、今の私がある』
織田さんは此方の目をじっと見る。
彼のいい所だ。真剣な話をする時彼は人の目をしっかり見る。
『でも彼にはそれがない。だから傍に居てあげてください、織田さん。それだけでいいんです』
「別にその位構わないが…お前ではだめなのか?」
『……私は、』
ーーーあの時、私は。
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ユウリ(プロフ) - ねころさん» 個人的に私もそこ大好きなので(自画自賛)同じ人が居て嬉しいです〜(^^)祝日の間にあと一、二話更新出来たらなぁと思います (2019年9月16日 7時) (レス) id: 7b452ad7ad (このIDを非表示/違反報告)
ユウリ(プロフ) - 神皇音雅樂さん» 指摘ありがとうございます!深夜テンションで書いていたので全く読み返した時と分かりませんでした……ストーキング夢主をこれからもどうぞよろしくお願いします(( (2019年9月16日 7時) (レス) id: 7b452ad7ad (このIDを非表示/違反報告)
神皇音雅樂(プロフ) - 夢主の太宰への一途さが可愛すぎます。これからも更新頑張ってください。あと、32話の"人の話"が"人な話"に、"首領の話"が"首領の話し"になっています。訂正お願いします。 (2019年9月16日 7時) (レス) id: d0313e3af1 (このIDを非表示/違反報告)
ねころ(プロフ) - 潔い…しゅき…のところが好きすぎて見返しては頬が緩むのを感じます。更新楽しみにさせて頂いております。 (2019年9月16日 0時) (レス) id: ef39eb690c (このIDを非表示/違反報告)
ユウリ(プロフ) - コメントありがとうございます!応援して頂けると本当に励みになりますm(_ _)m (2019年9月10日 18時) (レス) id: 7b452ad7ad (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ユウリ | 作成日時:2019年8月12日 13時