もう、離してください

丗陸 ページ45

Aside

怖い

怖い怖い怖い怖い怖い怖い怖い

体の震えが止まらない
上手く呼吸が出来ない
周りの空気が一気に冷えたかのように自分の体温が下がっていく

なんで？

ダメだ考えても思考が回らない
わかるのは一つだけ

あの人は狂ってる

でも、逃げられない
逃がしはしないとあの目にはっきりと書いてあった

「………さん、Aさん」

もう名前を呼ばないで…

「Aさん、どこか具合が悪いのですか？」

『やめてください！』

飛び起きて相手の顔を確認する

『し、しのぶ……さん？』

し「大丈夫ですか？」

『えっ……あ……すみません……』

し「ずっとうずくまっていたので何処か具合でも悪いのかと思いまして」

『いえ……ちょっと怖い夢を見ていただけなので、心配しなくても大丈夫です』

し「怖い夢、ですか。何かあったのですか？」

あぁ、今しのぶさんに言えば助けてもらえる
あの人に近づかなくて済む…
そう思って口を開けたのに


声が…………出ない


心より体が先に気づいてしまった
"言っては駄目だ"
言えば何をされるか分からない。でもきっと酷いことをされる

『本当に大丈夫です……』

泣き寝入りするしか無いのかぁ
自分で自分が情けない

し「そうですか…あまり無理はしないで下さいね。何かあれば私で良ければ相談に乗りますから。」

目の前で去っていく背中を引き留めたくて仕方がない
でも、動かない
腕を伸ばして掴みたい、助けてくださいと声を出したい

結局何も出来ないで病室に1人取り残された私は惨めでしょうがなかった

『師範……炭治郎……しのぶさん……私何か悪い事したかなぁ…』

恐怖や悲愴感が涙を止めてくれない

これが本当に悪夢である事を願って私は眠りについた

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