【d!】我々の筆録【短編集】 (ページ5)

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夕さり rb ページ5

あ

『ねェ、せんせ。』

格子窓から差した日光が、部屋全体に模様を作る。
カルテから目を背けると、窓の向こうの木の葉が揺れた。

rb「うん？」

『そこの木は、なんて名前なのかしら。』

rb「あァ、檜やな。」

林業やってる友人が苗余らせてたから1個だけ植えたものだ。先生と呼ばれた男は、日当たりが悪いところの方が良くなるとは聞きながら、なんだかんだ大きくなった、なんてしみじみ思った。

rb「今日は晴れてるから気持ちええやろ。」

多分、祇園ではお祭りもやってる時間帯だ。快晴でちょうどいい。

rb「…折角やし、お参りにでもいこかな。」

『あら、珍しい。』

先生——改め、ロボロは宗教を信じなかった。
基督教はおろか、仏教、この國に根強く残る神道さえ、彼の中では虚構であった。

それは、Aも理解している事だ。

rb「えそんなに珍しい…？」

『だって、先生ですもの。あたしのお母さんだったら話は別だけれど。あの人、あたしが床に伏した時には看病そっちのけでお参りしたのよ？』

rb「まア、だって、普通はそうするやろ。」

『先生は変わった人よ。自分に自信があるから神頼みせずに向き合ってくれるのでしょう。そういう人の方が頼もしいわ。』

rb「褒めてる？」

『とっても。』

彼女が病に倒れてから、何回木の葉が落ちたことか。
不治の病だと診断されたことは数しれず、たった1人、ロボロだけが治すと言ってくれたのだ。