【d!】我々の筆録【短編集】 (ページ14)

今日:2 hit、昨日:12 hit、合計:407 hit

・ページ14

いつの日か失われた、いつも通りの服装。
いつものコーヒーを飲む、いつも通りの朝。
そこに、少し特別な花束がひとつと、色あせた箱がひとつ。

グルッペンが用意した久しぶりのサプライズは前回よりささやかだった。
その割には、朝飯時に顔を合わせるだけで少し思い出して緊張している自分に、らしくもないなんて首をふる。

戦況は変わらず、劣勢。
東はトントン率いる共産陣営が3カ国。この3カ国に資源をほとんど占有されている。持久戦は不利。
西はエーミール率いる連合国が3カ国。工業力があって技術開発が進んでいる。兵器では勝ちにくい。
グルッペン率いる枢軸は新任が多くて任せきれない部分がある。唯一の古株はアジアからであるから支援も期待できない。

gr「相手の…連合の弱点は補給だからな。」

Uボートは対策されつつある。

gr「共産側は新人に任せるか、コネシマにシャオロン削ってもらうか…」

グルッペンは諦めたわけではなかった。それに、仮に諦めていたとしても、それを表に出すことは出来なかった。

すっかり日が暮れた。会議に参加している誰もが、今日も徹夜かもしれないと思っていた。

gr「…今日はここまでにしよう。」

総統のその言葉に、幹部全員が驚き固まった。
口々に感嘆詞をこぼすのみ。

gr「まあ、たまには、家族に何か買って帰るといい。」

わかったら、はやく。と急かす彼に未だ驚いたまま出ていく幹部達。外へ出てからは口々に喜びや困惑を言い、最早心配までしながら帰って行った。

ようやく、二人きり。

『…グルッペン。』

gr「あぁ。
…ちょっと、外に出ないか。」

缶詰めから解放されて歩く街並みは暗い。
2人だけが、月明かりというスポットライトの下で踊っている。

片方は、心臓を高ぶらせて。
片方は、心配を燻らせて。

gr「本当に、逃げなくていいのか？」

『うん、もう決まってたことでしょ。』

gr「逃げた方がマシだと思うぞ。」

『あ〜昔の俺様なグルッペンはどこに行ったのかしら〜！』

gr「…歳ですかね〜。」

美しい金髪に紛れて、白髪が見えている。
Aはそれが不憫に思えて仕方がなかった。

夜の寒さは厳しい。何も言わず、いつの間にか手を繋いでお互いに暖まっている。
顔が赤いのは、躊躇いか寒さか。