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彼の持つペンが地図に転がる。
Aを呼び、隣に座らせると、また目を逸らした。


gr「…A。」

『何?グルッペン。』


彼女はひどく優しい声で答える。
覚悟は、とっくの昔に決まっていた。


gr「共に死んで(戦って)くれるか?」
『勿論。』

gr「…はやない?」


最期まで、共に。
グルッペンの言葉は今後のAの自由を無くすことを意味する。

この国の総統は自分であり、戦争の責任は自分が負うことになる。妻であるAも、関係ないのに自分の恋人だというだけで糾弾されるだろう。

それなら彼女だけでも逃がして身分を隠して生きた方がいい。それが地獄のような道でも、自分と同じ目に遭うよりは。


――そんなことは、わかっていた。

それでもなお、グルッペンはAを手放したくなかった。
ただの我儘だ。断られると思っていた。

それをこうもあっさり答えられると拍子抜けしてしまう。


『当たり前でしょうが。なんだと思ってんの?』

gr「いや、だって、結構酷いこと言ったで?」

『これでお前は逃げろとか言われた方が傷付くわ。』

gr「そ、そう?」


7年も経ったら忘れてしまったのか、と思うと自然と舌打ちした。
ひとつ離れた椅子から立ち上がり、彼の首元を掴む。
驚いたグルッぺンから眼鏡を奪い、そこまでやってからなんだか恥ずかしくなって、


『…全世界を敵に回しても、貴方の隣にいる。最期まで名前を呼べるのが私の特権だから。
というか、私がほかに男作ったら呪うとまでいったやつがこんなとこでひよんな。』

gr「…じゃあなんで口じゃなかったんですかね?」

『うっさい!髭剃れ!』


ここ数週間仕事場に篭もりっぱなしのグルッペンには、身だしなみを整える暇もなかった。
それを理解してやっと、Aのための時間もなかった、流石に忙しいのを言い訳にして放置しすぎているかもしれない、と焦り始めた。

Aが扉に手をかける。


gr「あーいや。俺が悪かった。
…悪かったから、また明日仕切り直させてくれないか。」

「…うん。明日ね、」


グルッペンの方へ振り返ると、長い髪が揺れた。
そのまま、追い出した部下たちを呼びに行った。

部屋に残されたグルッペンは1人、ため息をついた。


gr「…さて、」


どうしたものか。

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作者名:etra | 作成日時:2024年3月16日 13時

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