【d!】我々の筆録【短編集】 (ページ11)

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――それから、7年の月日が流れた。

“どこかの国は西に進んで開拓しただろう？我々は東に行く。
東の荒地を耕して、開発してやるんだ。”

随分前に語ったその野望が、果たされようとしている。
しかし、戦況は芳しくなかった。

gr「…案外耐えとるねん、トン氏。ゾムシャオとかどっか義勇軍送ってきてんだろ。そうなると…連合側がいつ刺してくるか。」

想定では、冬が訪れる前に首都を陥落させているはずだった。
雪が随分積もった今も尚、その兆しは見えない。

Aは戦争のことはさっぱりだ。
ただ、これだけ頭を悩ませている彼を見ると、どうしようもなく不安になってしまう。
出てくる名前も、Aですら知っている国のトップたちだけ。

『本当に、全世界を敵に回して…』

作戦会議中の彼らには届かない本音。
Aは戦争や政治において力になれないけれど、グルッペン･フューラーという男を信じることは出来る。

さいごの、さいごまで。どんな状況であっても。
それが妻の責務だと考えているのだ。

“全世界を敵に回しても、勝てばいい。彼ならできる。
この戦争を終わらせられる。”