【d!】我々の筆録【短編集】 (ページ2)

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忘失 kn ページ2

空気が霞んで、夕焼けを薄くする。

黄昏時の空は昼間までの青さが白けて、未だ星が見えない。

kn「…まぶし、」

そのくせ、西日だけは眩しい。

コネシマにはそれが理不尽のように感じて仕方がなかった。

いつからか広くなり、物が減った家。

その全てが夕日にきらめく。
そこに光の残り香でもあるように、きらめく。

kn「終わりやな。」

おじさんくさいうめき声と共に伸びをした。

逮捕されて投獄中とか言って誤魔化された彼の実態は、単に忙しくしていて、実況その他の――要するに仕事以外に――手が回らなかったというだけである。

いや、それだけでは無いのだけれど。

kn「晩飯…何にしよかな。」

ここ数日の晩御飯と言えば、出前で済ませてはプラスチックごみを重ねていた。
溢れんばかりのそれを、無彩色のごみを、透明に押し込む。

次のごみ回収の日は何時だったか、とか思っているうちに通り過ぎてしまったから溜まっているのだ。

身の回りのことが出来ない男だった。
自身の彼女に任せっきりになっていたから、今でも、出来ないこと、忘れてしまうことが多い。

その彼女が居なくなったここ数日は尚更。

kn「…食べに行くかぁ。」

扉の閉まる音だけが反響する。

SNSとか、ニュースとかの見向きもしない通知をはじく。
その中に、連絡が2件あった。

うち1つに簡単に返事をして、小さめの鞄と、増えた鍵をひとつ。
忘れずに財布も持った。どうせ奢ることになるというのは目に見えていた。
　